日中の強い眠気は睡眠時無呼吸かも|他の病気との見分け方

「しっかり寝ているはずなのに、日中とにかく眠い」という方へ。単なる寝不足なのか、睡眠時無呼吸なのか、それとも別の原因なのか。見分けるための考え方を整理します。
日中の強い眠気は、多くの人が「寝不足のせい」「年齢のせい」と片付けてしまいがちな症状です。しかし、睡眠時間を十分に取っているつもりでも眠気が続く場合、背景に睡眠時無呼吸症候群(SAS)や他の病気が隠れていることがあります。この記事では、日中の眠気の原因を整理しながら、どんな場合に受診を検討すべきかを解説します。
なぜ「寝ているのに眠い」ということが起こるのか
睡眠時無呼吸症候群では、夜間に呼吸が止まる・弱くなることが繰り返され、そのたびに脳が「危険」を察知して微小な覚醒反応を起こします。本人はこの覚醒をほとんど自覚しませんが、一晩に何十回、重症の場合は何百回と繰り返されることで、深い睡眠(徐波睡眠)がほとんど取れなくなります。結果として、睡眠時間そのものは長くても、睡眠の「質」が著しく低下し、日中に強い眠気として現れます。
さらに、無呼吸に伴う夜間の低酸素状態も、翌日の倦怠感や集中力低下に影響すると考えられています。「昨夜は8時間寝たのに眠い」という感覚は、SASにおいて典型的に見られるパターンです。
自分の眠気レベルをチェックする
医療現場でよく使われる眠気の指標に「エプワース眠気尺度(ESS)」があります。これは、日常のさまざまな状況で「うとうとする可能性」を自己評価するもので、以下のような場面についてそれぞれ0〜3点で評価します。
- 座って読書をしているとき
- テレビを見ているとき
- 会議や映画館など、人の多い場所で座っているとき
- 午後に横になって休んでいるとき
- 座って人と話しているとき
- 昼食後、静かに座っているとき
- 車の運転中、信号待ちで数分間停止しているとき
合計点が高いほど、日中の眠気が強いと評価されます。一般的に合計点が高い(目安として11点以上)場合は、医療機関への相談を検討する材料になります。ESSはあくまで自己評価のスクリーニングツールであり、これだけで診断が確定するものではありませんが、「自分の眠気がどの程度か」を客観的に把握する手がかりになります。
日中の眠気を引き起こす、SAS以外の原因
日中の眠気の原因はSASだけではありません。以下のような要因でも、同じように強い眠気が生じることがあります。
単純な睡眠不足:そもそもの睡眠時間が足りていない場合です。生活習慣を見直すことで改善することが多く、SASのように「寝ているのに眠い」というより、「寝る時間が足りていない」という自覚があることが多いパターンです。
加齢による睡眠の変化:年齢とともに睡眠が浅くなりやすく、中途覚醒が増える傾向があります。SASと症状が似ることがあるため、見分けが難しい場合もあります。
薬剤の影響:睡眠薬、抗ヒスタミン薬、一部の降圧薬など、眠気を引き起こす副作用のある薬を服用している場合、それが原因になっていることがあります。
うつ病などの精神的な要因:気分の落ち込みとともに、過眠・倦怠感が現れることがあります。SASとの合併も珍しくないため、両方の可能性を念頭に置く必要があります。
その他の睡眠障害:ナルコレプシーなど、SAS以外の睡眠に関わる病気でも、日中の強い眠気が主症状として現れることがあります。頻度は高くありませんが、若いうちから急に強い眠気や情動脱力発作(笑ったときなどに力が抜ける)がある場合は、こうした病気の可能性も考慮されます。
「SASらしさ」を見分けるヒント
決定的な自己診断はできませんが、以下のような特徴が重なる場合は、SASの可能性を積極的に考えたほうがよいとされています。
- いびきが大きい、または呼吸が止まっていると指摘されたことがある
- 十分な睡眠時間を取っているつもりでも眠気が続く
- 朝起きたときに頭が重い、口が渇いている
- 夜間に何度もトイレに起きる
- 肥満気味、または顎が小さい・後退している体型的特徴がある
- 高血圧などの生活習慣病がある
これらの中でも、単なるいびきだけでなく、夜間に息苦しさで目が覚める、あるいは「カハッ」と喘ぐような呼吸(あえぎ呼吸)をしていると指摘されたことがある場合は、SASの可能性がより高いサインとされています。いびきの音量そのものよりも、こうした窒息感やあえぎ呼吸を伴っているかどうかが、見分ける際の重要な手がかりになります。
また、「太っていないから自分は大丈夫」とは限りません。日本を含む東アジア系の人は、欧米系の人と比べて骨格的に下顎が小さい・後退している傾向があるとされ、肥満でなくてもSASを発症しやすいことが指摘されています。痩せ型・標準体型であっても、いびきや呼吸停止の指摘があれば、体型だけで可能性を除外しないようにしてください。
一方で、「睡眠時間そのものが明らかに不足している」「特定の薬を飲み始めてから眠気が出てきた」というように、はっきりした心当たりがある場合は、まずその要因の見直しから始めるという考え方もあります。ただし、見直しても改善しない場合は、他の原因も含めて医療機関に相談することをお勧めします。
なお、高血圧に加えて心不全や心房細動(不整脈の一種)などの持病がある方は、客観的な無呼吸の重症度が高くても、日中の眠気を自覚しにくい傾向があると指摘されています。「眠気が強くないからSASではないだろう」と考えず、こうした持病がある方は、いびきや呼吸停止の指摘だけでも検査を検討する価値があります。
眠気を放置することのリスク
日中の強い眠気を「よくあること」として放置すると、見過ごせないリスクにつながることがあります。特に指摘されているのが交通事故のリスクで、未治療のSAS患者は、そうでない人と比べて事故リスクが高まるという報告が複数あります。日本国内のデータでも、居眠り運転による事故は、通常の事故に比べて死亡・重傷事故につながる割合が高いことが示されています。
「眠いと感じてはいるが、事故には至っていない」という段階で気づき、原因を確認することが、自分自身だけでなく周囲の安全を守ることにもつながります。
受診の目安
以下に当てはまる場合は、一度医療機関に相談することをお勧めします。
- ESSのセルフチェックで眠気レベルが高いと感じる
- 会議中や運転中に、意図せずウトウトしてしまうことがある
- いびきや呼吸停止を家族から指摘されたことがある
- 十分寝ているはずなのに、日中の眠気が何週間も続いている
相談先としては、呼吸器内科・耳鼻咽喉科・睡眠専門外来などがあります。問診や自己評価に加え、必要に応じて自宅でできる簡易検査などが行われ、そこから精密検査に進むかどうかが判断されます。当院は睡眠・アレルギー専門のオンライン診療クリニックで、新規の検査・診断からCPAP治療中の方の転院・継続管理まで対応しています。
なお、「眠れないので睡眠薬がほしい」という希望をお持ちの方もいますが、オンライン診療の初診では、指針に基づき睡眠薬などの向精神薬を処方することはできません。眠気の原因がSAS以外にある可能性も含めて、まずは対面診療でしっかりと相談することが、安全な診断・治療の第一歩になります。
眠気の原因を切り分けるための簡単な整理法
自分の眠気がどのパターンに近いか、次の質問を自分に投げかけてみると、原因の切り分けに役立ちます。
- 平日と休日で、眠気の強さに差はあるか(差が大きい場合は睡眠不足の可能性)
- 新しく飲み始めた薬やサプリメントはないか(薬剤性の可能性)
- 気分の落ち込みや興味の喪失など、他の変化も伴っていないか(精神的な要因の可能性)
- いびきや呼吸停止の指摘、体型的な特徴(肥満、顎が小さいなど)に心当たりがあるか(SASの可能性)
- 座っているだけで意図せず寝落ちしてしまうか、それとも「だるさ」はあるが眠り込むことはないか
最後の点は見落とされがちですが、「眠気」と「疲労感(だるさ)」は別の感覚として区別して考えることが役立ちます。会議中や運転中など、通常は起きていられる場面で意図せず眠り込んでしまう場合は「眠気」が主体であり、SASを含む睡眠の問題を積極的に疑う根拠になります。一方、体はだるく気力が湧かないものの、座っていて寝落ちすることはないという場合は、睡眠そのものよりも、内科的な要因や精神的な要因が背景にある可能性がより高くなります。
これらはあくまで簡易的な整理であり、確定的な診断にはつながりません。複数の要因が重なっていることも多いため、「これだから眠い」と決めつけず、気になる場合は医療機関で相談することをお勧めします。
よくある質問
Q. 睡眠時間は足りているのに眠いです。SASの可能性はありますか?
A. 時間が足りていても、睡眠の質が低下していると眠気が残ることがあります。いびきや呼吸停止の指摘がある場合は、可能性のひとつとして考えられます。
Q. エプワース眠気尺度は自分で計算できますか?
A. はい、7つの場面についてそれぞれうとうとする可能性を自己評価し、合計点を出す形式です。あくまでスクリーニングの目安であり、確定診断には別途検査が必要です。
Q. 眠気の原因がSASか他の病気か、どうやって見分ければいいですか?
A. 自己判断で完全に見分けることは難しいため、いびきの有無、睡眠時間、服用中の薬、気分の状態などを整理したうえで、医療機関に相談することをお勧めします。
日中の眠気が気になる方へ
「寝ているはずなのに眠い」という状態が続く場合、まずは原因を整理してみることが大切です。ご不明な点があれば、当院までお気軽にご相談ください。
CPAP転院・継続フォロー外来の詳細を見る →参考・出典
- 日本呼吸器学会『睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン 2020』
- 日本循環器学会 等『循環器領域における睡眠呼吸障害の診断・治療に関するガイドライン(JCS 2023)』
- 厚生労働省『オンライン診療の適切な実施に関する指針(令和8年4月改訂版)』
- 警察庁『交通事故統計』
- World Health Organization 関連資料(居眠り運転と事故リスクに関する報告)
