睡眠・アレルギーオンライン診療クリニック ロゴ
睡眠・アレルギー
オンライン診療クリニック
CPAP・睡眠時無呼吸症候群

いびき防止グッズ・スマホのいびき計測アプリで対策しても改善しない理由

鼻腔拡張テープや口閉じテープ、いびき計測アプリを試しても改善しない方へ。グッズごとに対応できる原因と、アプリで分かること・分からないことを整理します。

鼻腔拡張テープ、口閉じテープ、いびき防止枕、スマートフォンのいびき計測アプリ——市販の対策を色々試したのに、いびきが改善しない、あるいはアプリのスコアは良くなったはずなのに朝の疲れが取れない、という方は少なくありません。この記事では、市販グッズやアプリが「無意味」なのではなく、それぞれが対応できる原因と測定できる項目に限りがあることを、カテゴリーごとに整理します。特定の商品名は挙げず、グッズの種類ごとに何をしているか・何ができないかという視点で説明します。

いびきの原因は「鼻」だけではない

いびきは、狭くなった上気道を空気が通るときに、軟口蓋などの組織が振動して生じる音です。この上気道の狭窄は、鼻の入り口付近だけでなく、軟口蓋、咽頭の側壁、舌の付け根(舌根)、扁桃、喉頭蓋など、複数の部位で起こりえます。肥満、加齢、仰向けでの就寝、飲酒、鼻炎などの要因が重なることも多く、一人の中に複数の狭窄部位が存在することも珍しくありません。

そのため、鼻腔拡張テープで鼻の通りがよくなっても、舌根や咽頭が狭くなっていれば、いびきや無呼吸自体は残ります。たとえるなら、鼻は建物の「玄関」にあたる部分で、玄関を広げても、奥の廊下(咽頭や舌根の部分)が塞がっていれば、空気全体の通りはよくなりません。一つの製品は一つの原因にしか対応できないことが多く、複数の狭窄部位がある方には、単一のグッズでは不十分な場合があります。

グッズごとに対応できる原因と限界

市販されているいびき対策グッズは、想定している原因も作用の仕組みも異なります。それぞれの位置づけを整理します。

カテゴリー想定する原因・作用効果が乏しいケース
鼻腔拡張テープ・拡張器鼻の入り口付近の狭さを外側・内側から広げる舌根・咽頭・扁桃による閉塞には対応できない
口閉じテープ口唇を閉じて鼻呼吸を促す鼻づまりがある人には不向き。舌根の沈下・咽頭の虚脱には対応しない
チンストラップ睡眠中の開口を抑える単独使用でのいびき・無呼吸改善の根拠は乏しい
市販の成形マウスピース下顎の位置をある程度保持する調整不足、鼻づまり、中等症以上の無呼吸には不十分なことがある
体位療法グッズ・いびき枕仰向けを避け、頭頸部の角度を変える横向きでも無呼吸が起こる「非体位依存型」には効果が限定的
加湿器・鼻腔洗浄鼻の乾燥・分泌物による症状を和らげる解剖学的な狭窄そのものは解消しない

鼻閉を伴う軽いいびきでは鼻腔拡張テープが、仰向けで明らかに悪化するタイプでは体位を変える対策が、それぞれ補助的に役立つ場合があります。一方で、歯科医師が患者ごとに作製・調整する医療用の口腔内装置(下顎前方移動型のマウスピース)は、軽症〜中等症の睡眠時無呼吸に対する正式な治療選択肢のひとつとして位置づけられています。市販の既製品マウスピースとは、個人にあわせた調整の有無や、効果を検査で確認する仕組みの有無が異なるため、同列には扱えません。歯や顎関節への影響が出ることもあるため、使用する場合は歯科でのフォローが推奨されています。

いずれのグッズも、「音が小さくなること」と「気道の閉塞や呼吸の異常が解消すること」は別問題です。口を閉じていびきの音が静かになっても、呼吸そのものは乱れたままということがあります。これは、警報音が小さくなったからといって、警報の原因である火元が消えたとは限らないのと同じです。

スマホのいびき計測アプリで分かること

スマートフォンのマイクを使ったいびき計測アプリは、いびきの有無、時間帯ごとの傾向、録音音声、飲酒や体位との関連に気づく手がかりとして役立ちます。「いつ、どのくらいの頻度でいびきをかいているか」を客観的に振り返る補助にはなります。

スマホアプリで分からないこと

一方で、通常のマイク録音による計測では、鼻や口からの空気の流れ、胸やお腹の呼吸努力、血中の酸素飽和度、脳波、覚醒反応、実際に眠っていた時間を直接測定していません。そのため、録音上の「静かな時間」が、正常に呼吸している状態なのか、無呼吸が起きている状態なのか、単にマイクから体が離れただけなのかを、音声だけで区別することができません。たとえるなら、映像の消えた防犯カメラのようなもので、何も起きていないのか、異常が起きたのかを、音の記録だけでは判断できないのです。

また、アプリが表示する独自の「いびきスコア」は、体温計のような医学的な共通基準ではなく、各アプリが独自に計算する音響指標にすぎません。アプリのスコアが改善したからといって、(無呼吸低呼吸指数)や血中酸素濃度が改善したことを意味するわけではなく、閉塞性無呼吸と中枢性無呼吸を区別することもできません。研究環境では高い精度を示す音響解析アルゴリズムも報告されていますが、そうした研究の多くは小規模で、端末をベッドの近くに固定するなど、一般家庭でのアプリ利用とは条件が異なります。市販アプリだけで睡眠時無呼吸症候群を診断・除外できる段階にはありません。

さらに、睡眠時無呼吸症候群の重症度は一晩ごとに変動することが知られており、体位、飲酒、鼻づまり、睡眠段階などによって数値が変わります。一晩だけアプリのスコアが良かった・悪かったことをもって、症状が治った・悪化したと判断することも適切ではありません。

いびきが減っても無呼吸が残ることがある理由

「口を閉じたら静かになった」「鼻テープで音が小さくなった」という変化があっても、それは音の問題が軽減しただけかもしれません。無呼吸の重症度を医学的に評価するには、鼻や口の気流、呼吸努力、血中酸素飽和度などを記録できる検査機器が必要です。市販グッズやアプリは、こうした生体信号を測定する設計にはなっていません。医療用の睡眠評価装置は、脳波・胸壁の動き・気流・酸素飽和度など複数の生体信号を同時に記録する点で、寝室の音だけを取得する一般的なアプリとは本質的に異なります。

自己対策を続けてよい場合・受診を検討すべき場合

次の条件をおおむね満たす場合は、鼻炎対策、節酒、体重管理、横向き寝、鼻腔拡張器などを1〜2週間程度、条件をそろえて試しながら経過を見る余地があります。

  • 一時的な鼻づまりや飲酒時だけの軽いいびきである
  • 仰向けのときに限られる
  • 家族から無呼吸や窒息するような音を指摘されていない
  • 日中の強い眠気、起床時の頭痛、熟睡感のなさがない
  • 高血圧・心不全・心房細動・脳卒中の既往がない

一方、次のような場合は、市販対策を続けるよりも、医療機関への相談を優先することをおすすめします。

  • 習慣的で大きないびきがある
  • 家族から呼吸停止を指摘された、または窒息・あえぎで目が覚める
  • 朝の頭痛、口の渇き、夜間の頻回な覚醒、熟睡感のなさが続く
  • 日中の眠気、集中力の低下がある
  • 高血圧(特に治療しても下がりにくい高血圧)、心房細動、心不全、糖尿病、脳卒中の既往がある
  • 痩せていても小顎・下顎後退がある
  • 市販対策を続けても改善しない

症状が乏しくても、家族が明確な呼吸停止を繰り返し確認している場合は、検査の対象になりえます。また、運転中に眠りそうになる、機械操作や高所作業中に眠気が出るといった状態は、危険な行為を避けたうえで速やかな相談が必要です。

医療機関ではどのように調べるのか

医療機関での評価は、問診に加えて、口腔・鼻腔・顎顔面の状態を確認したうえで、自宅でできる簡易検査、必要に応じてを組み合わせて行われます。自宅で行う簡易検査も万能ではなく、結果が陰性・不十分であっても、症状から疑いが強い場合はPSGが必要になることがあります。検査の違いについては自宅検査とPSGの違いで詳しく解説しています。

オンライン診療では、問診や検査キットの手配までを自宅・オンラインで進められる場合がありますが、鼻中隔、扁桃、舌根、喉頭蓋などの局所的な評価には、対面での診察や内視鏡検査が必要になる場面もあります。検査の結果、CPAP治療の導入が必要と判断された場合には対面での診察が必要になり、重症の睡眠時無呼吸が疑われる場合や合併症の精査が必要な場合は、対応可能な医療機関への紹介が行われます。

いびき・日中の眠気が気になる方へ

オンラインでの初診相談から、ご自宅でできる検査までを承っています。対面が必要になるのはCPAP導入が必要と判明した場合のみで、その際は新宿駅から徒歩6分の新宿院でご案内します。市販グッズやアプリを試しても改善しない場合は、原因を検査で確認することを検討してください。

いびき・日中の眠気 専門外来を見る →

よくある質問

Q. いびき防止グッズは効果がないのですか。

A. 効果がないわけではありません。原因に合えば症状が軽減することもありますが、対応できる原因の範囲は製品によって限られています。鼻づまりが原因の一部にすぎない場合や、舌根・咽頭の狭窄が主な原因である場合には、単一の製品だけでは不十分なことがあります。

Q. いびき計測アプリでは睡眠時無呼吸症候群を発見できませんか。

A. 一般的なマイク録音アプリだけで睡眠時無呼吸症候群を診断・除外することはできません。傾向をつかむ記録としては役立ちますが、無呼吸・低酸素の有無を確認するには、専用の検査機器を用いた検査が必要です。

Q. アプリのスコアが下がったので、治ったと考えてよいですか。

A. スコアの低下だけでは、AHIや血中酸素濃度の改善を確認したことにはなりません。症状が続く場合は、検査による評価をご検討ください。

Q. 痩せているので睡眠時無呼吸症候群にはならないですよね。

A. 体型だけで否定することはできません。小顎・下顎後退、扁桃肥大、鼻づまりなど、肥満以外の要因でも睡眠時無呼吸症候群は起こりえます。

※本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の製品・アプリの効果や、個別の症状に対する診断・治療効果を保証するものではありません。市販グッズの安全性や適否は、ご自身の鼻の症状や既往によって異なりますので、気になる症状が続く場合は医療機関にご相談ください。検査方法・対面診療の要否は、症状や既往を踏まえて医師が判断します。
監修者の写真
監修
廣瀬 有紀子(ひろせ ゆきこ)
耳鼻咽喉科専門医・アレルギー専門医・日本医師会認定産業医
信州大学医学部医学科卒業。東京慈恵医科大学付属病院 耳鼻咽喉科ほか都内医療機関に勤務。日本睡眠学会、日本アレルギー学会、日本耳鼻咽喉科頭頚部外科学会、日本口腔・咽頭科学会 所属。
詳しいプロフィールを見る ›
いびき・日中の眠気が気になる方へ

まだCPAPを始めていない方向けの「いびき・日中の眠気 専門外来」もございます。

専門外来について見る