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CPAP・睡眠時無呼吸症候群

SASと高血圧・心疾患の関係|治療しないと何が起きるか

SASと高血圧・心疾患の関係|治療しないと何が起きるか

「睡眠時無呼吸症候群と言われたが、眠気以外に何か問題があるの?」という方へ。SASが心臓・血管に与える影響と、CPAP治療によって何が改善するかを整理します。

睡眠時無呼吸症候群(SAS)は「眠れない・眠い」だけの病気ではありません。治療せずに放置すると、心臓・血管系に深刻なダメージが積み重なることが、数多くの研究で示されています。

「いびきがひどいだけで命に関わるとは思えない」と感じる方も多いですが、その「いびき」の陰で毎晩繰り返される低酸素と血圧の急上昇が、じわじわと体を蝕んでいる可能性があります。

なぜSASが心臓・血管を傷めるのか

SASで無呼吸が起きるたびに、体の中では以下のことが連鎖的に起きています。

① 血中酸素が低下する(間欠的低酸素)
呼吸が止まるたびに血中の酸素濃度(SpO2)が低下します。重症のSASでは、一晩に何百回もSpO2が90%以下に落ちることがあります。この繰り返しの低酸素が、血管内皮の損傷・活性酸素の産生・炎症反応を引き起こします。

② 覚醒反応のたびに交感神経が活性化する
無呼吸を感知した脳は「危険」と判断して覚醒反応を起こします。このとき交感神経が急激に活性化し、心拍数・血圧が急上昇します。一晩に何十〜何百回もこの急上昇が繰り返されることで、血管への負担が蓄積します。

③ 胸腔内圧の変動が心臓に負担をかける
気道が塞がった状態で呼吸しようとすると、胸腔内圧が大きく変動します。この変動が心臓の形態(心室壁・弁への負荷)に影響を与え、長期的には心臓の機能低下につながります。

SASと高血圧の関係

「治療抵抗性高血圧」の大半にSASが隠れている
複数の降圧薬を使っても血圧が下がらない「治療抵抗性高血圧」の患者を調査すると、その50〜80%にSASが見つかるという報告があります。「薬が効かない高血圧」の背景にSASがある場合、CPAPで無呼吸を治療することで血圧が下がるケースがあります。

早朝高血圧の原因になることがある
通常、血圧は睡眠中に下がりますが(夜間降圧)、SASがあると睡眠中も交感神経が活性化し続けるため、この夜間降圧が起きません(Non-dipper型)。朝起きたときに血圧が高い状態が続くのは、このパターンのサインであることがあります。

数値として:SASがあると高血圧になるリスクが約2倍
睡眠時無呼吸がある人は、ない人と比較して高血圧を発症するリスクが約2倍になるという前向き研究の結果が示されています。

SASと心疾患の関係

冠動脈疾患(狭心症・心筋梗塞)
SAS患者では冠動脈疾患の有病率が高く、冠動脈疾患患者を調査するとSASを合併しているケースが多いことが知られています。低酸素・炎症・血管内皮機能障害の蓄積が、動脈硬化を促進し、冠動脈疾患のリスクを高めます。

心房細動(不整脈)
SASは心房細動の独立したリスク因子です。心房細動患者の約50%にSASが合併しているという報告もあります。カテーテルアブレーション後の再発率が、SASを合併している患者では有意に高いことが示されており、SAS治療(CPAP)を並行することで再発率が下がる可能性が指摘されています。

心不全
心不全の患者にもSASの合併が多く見られます(中枢性と閉塞性の両方)。SASによる低酸素・交感神経亢進・心臓への負荷増大が心不全の悪化因子になると考えられています。

脳卒中
SAS患者では脳卒中のリスクが約2〜3倍高いという報告があります。夜間の血圧急上昇・血管内皮障害・血液凝固能の亢進などが複合的に影響していると考えられています。

CPAP治療で何が改善するか

CPAP治療を適切に継続することで、以下の改善が報告されています。

  • 血圧の低下:複数のメタ分析によると、CPAP治療によって収縮期血圧が平均3〜5mmHg程度低下するという結果が示されています。治療抵抗性高血圧の患者では、より大きな降圧効果が得られるケースもあります。
  • 夜間の交感神経活性化の抑制:CPAP使用中は無呼吸が防がれるため、交感神経の急性活性化が抑制され、睡眠中の心拍数・血圧の急激な変動が減ります。
  • 心房細動の再発抑制(一部のケース):心房細動のカテーテルアブレーション後にCPAPを継続した患者では、再発率が低下したという研究があります。
  • 心血管死亡リスクの低減(特に中等症〜重症):中等症〜重症のSASでCPAPを適切に使用した患者では、心血管系の死亡リスクが低下するという観察研究の結果があります(ただし大規模RCTでの証明は限定的であり、現在も研究が続いています)。

「血圧の薬を飲んでいるからSASを治療しなくていい」は誤解

高血圧の薬を飲んでいる方の中には、「降圧剤で血圧が管理できているからSASは関係ない」と思う方がいます。しかし、SASが原因で高血圧が起きている場合、降圧剤はあくまで症状を抑えているだけで、根本原因(無呼吸による交感神経刺激・血管ダメージ)は続いています。薬で血圧数値が下がっていても、SASによる低酸素・血管へのダメージは夜ごと繰り返されます。心臓・血管への影響を根本から減らすためには、SASそのものを治療することが重要です。

こんな方は特にSASの検査を

以下の条件に当てはまる方は、SASの合併を積極的に疑って検査を受けることをお勧めします。

  • 高血圧があって降圧薬が2種類以上必要
  • 薬を飲んでいても血圧が安定しない
  • 心房細動の治療を受けている
  • 狭心症・心筋梗塞の既往がある
  • 脳卒中・TIAの既往がある
  • 早朝の血圧が特に高い

これらの状態がある方でSASが見つかった場合、CPAPを追加することで心血管管理の質が改善する可能性があります。循環器科・内科の主治医と連携しながら睡眠の問題も確認することが重要です。

まとめ

SASは「眠れない」だけの問題ではなく、高血圧・冠動脈疾患・心房細動・脳卒中・心不全など、命に関わる病気のリスクを高める全身疾患です。CPAP治療は睡眠の改善だけでなく、こうした心血管リスクを下げる治療としての意義もあります。「いびきがひどいだけ」「眠気があるだけ」と放置せず、SASの検査・治療を検討することが、長期的な健康管理につながります。

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※本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の診断・治療効果を保証するものではありません。個々の症状や治療方針については、担当医にご相談ください。
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監修
廣瀬 有紀子(ひろせ ゆきこ)
耳鼻咽喉科専門医・アレルギー専門医
信州大学医学部医学科卒業。東京慈恵医科大学付属病院 耳鼻咽喉科ほか都内医療機関に勤務。日本睡眠学会、日本アレルギー学会、日本耳鼻咽喉科頭頚部外科学会、日本口腔・咽頭科学会 所属。
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