太っていないのにいびき・SASと言われる理由|痩せ型でも注意な人の特徴

「肥満体型ではないのに、いびきを指摘された」という方へ。睡眠時無呼吸症候群は太っている人だけの病気ではありません。痩せ型でも注意が必要な理由を解説します。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)というと、「肥満体型の中高年男性がなる病気」というイメージを持つ方が多いのではないでしょうか。しかし実際には、日本国内のSAS患者のうち、およそ3割から4割は肥満とは言えない体型(BMI25未満)であるとされています。「太っていないから自分は大丈夫」という思い込みが、かえって発見を遅らせてしまうことがあります。この記事では、痩せ型・標準体型の方がSASになる理由と、注意すべき特徴を整理します。
肥満型と非肥満型、原因が異なる
肥満によるSASは、首や喉周りに脂肪がつくことで、物理的に気道が狭くなることが主な原因です。一方、痩せ型・標準体型の方がSASになる場合、原因は脂肪ではなく、骨格や気道まわりの組織の構造にあることが多いとされています。
顎の骨格(小顎症・下顎後退):下顎が小さい、あるいは後方に引っ込んでいると、口の中の容積が狭くなり、睡眠中に舌の付け根が喉の奥に落ち込みやすくなります(舌根沈下)。これが気道をふさぐ主な要因になります。
扁桃腺・アデノイドの肥大:体型とは関係なく、扁桃腺やアデノイドが大きい場合、空気の通り道が物理的に狭くなります。
鼻づまり(アレルギー性鼻炎など):鼻での呼吸がしづらいと口呼吸になりやすく、口呼吸は顎を開かせて気道を狭める方向に働きます。アレルギー性鼻炎による慢性的な鼻づまりがある方は、この点でもリスクが高まります。
加齢によるのどの筋力低下:年齢とともに、気道を支える筋肉の緊張が徐々に低下します。もともと骨格的に気道が狭い傾向にある方は、若いころは筋力でカバーできていても、40代・50代以降にいびきや無呼吸が顕在化することがあります。
日本人・アジア人は骨格的に注意が必要とされる
SASの起こりやすさは、「骨格という器(顎や気道まわりの骨格の大きさ)」と、「その器に収まる軟部組織(舌・脂肪・扁桃など)」のバランスで説明されることがあります。器が広ければ、多少軟部組織が増えても気道は塞がれにくく、逆に器が狭ければ、わずかな軟部組織の増加(少しの体重増加や扁桃の肥大など)だけでも気道が狭くなりやすくなります。
同じ重症度のSASであっても、アジア系の人種は欧米系の人種と比べて体重(BMI)が低い傾向にあることが、複数の研究で指摘されています。これは、日本人を含むアジア人が骨格的に、この「器」そのものが狭い傾向にあるためと考えられています。つまり、日本人はもともと器が小さいぶん、少量の軟部組織の増加だけでも喉の通り道が狭くなりやすく、「体重が増えていないから安心」という考え方は、日本人においては特に当てはまりにくいということになります。
痩せ型のSASが見落とされやすい理由
痩せ型・標準体型のSASは、本人にも周囲にも見過ごされやすいという特徴があります。
「太っていない=大丈夫」という思い込み:本人はもちろん、家族や医療者側にも、体型を基準にした先入観があることがあります。この結果、いびきを指摘されても「そういう体質」で片付けられてしまうことがあります。
日中の眠気を自覚しにくいケースが多い:痩せ型・非肥満型のSAS患者では、日中の強い眠気を自覚していない方が半数近くに上るという指摘があります。「眠気がないからSASではない」と考えてしまうと、他の症状(起床時の頭痛、夜間頻尿、集中力低下など)を見逃してしまう可能性があります。特に心不全や心房細動などの循環器疾患を合併している方は、無呼吸の程度が客観的に重くても、日中の眠気を自覚しにくい傾向があると指摘されています。「眠気が少ないから軽症のはず」とは限らないため、こうした持病がある方は、痩せ型であってもいびきや呼吸停止の指摘を軽視しないことが大切です。
別の不調と誤解されやすい:原因不明の疲労感や頭痛が、「ストレス」「自律神経の乱れ」として片付けられ、SASの可能性が検討されないまま時間が経過してしまうこともあります。
痩せ型で注意したい人の特徴
以下のような特徴に心当たりがある方は、体型に関わらずSASのリスクを考慮したほうがよいとされています。
- 横から見たときに、下顎が小さい・引っ込んでいるように見える
- 歯並びが乱れている、出っ歯の傾向がある
- 口を大きく開けたとき、喉の奥(のどちんこ)が見えにくい
- 慢性的に鼻が詰まっている、朝起きたときに口が乾いている
- お酒を飲んだ夜だけ、家族から激しいいびきや呼吸停止を指摘される
- 睡眠中に息苦しさで目が覚める、または「カハッ」と喘ぐような呼吸(あえぎ呼吸)をしていると指摘されたことがある
これらの中でも、単なるいびきの大きさよりも、夜間の窒息感やあえぎ呼吸を伴っているかどうかは、体型にかかわらずSASの可能性がより高いことを示す重要なサインとされています。痩せ型であっても、こうした症状がある場合は体型を理由に可能性を除外しないでください。
これらはあくまで注意すべき傾向であり、これらに当てはまるからといって必ずSASであるとは限りません。気になる場合は、自己判断せず医療機関に相談することをお勧めします。
保険適用基準の緩和で、境界域だった方も治療対象に
痩せ型・標準体型のSASは、重症度が軽症〜中等症の「境界域」にとどまるケースが比較的多いとされています。この点で知っておきたいのが、令和8年度の診療報酬改定によるCPAPの保険適用基準の見直しです。従来は精密検査(PSG)でAHI20以上、簡易検査でAHI40以上が保険適用の目安とされていましたが、改定後はそれぞれAHI15以上、AHI30以上に引き下げられています(基準は今後の改定でも変わることがあります)。これにより、以前は「中等症で経過観察」とされていた境界域の方も、正式な治療対象として検討できるようになった可能性があります。過去に「基準に届かない」と言われた経験がある方も、当時の検査データを持参のうえ、改めて相談する価値があります。
「痩せればよくなる」とは限らない
肥満が原因のSASでは減量が有効な対策になりますが、骨格や扁桃肥大が主な原因である痩せ型・標準体型のSASの場合、体重を落としても気道の狭さそのものは変わらないため、減量による改善はあまり期待できないとされています。むしろ、必要以上に体重を落とそうとすることで、のどや呼吸に関わる筋力がかえって低下し、症状が悪化する可能性も指摘されています。原因に応じた適切な対応(CPAP、マウスピース、鼻づまりの治療など)を検討することが重要です。
痩せ型・非肥満型で軽症〜中等症の方には、下顎を前方に固定する「マウスピース(口腔内装置)」が有効な選択肢になることがあります。また、若い方や比較的軽症の方では、仰向けで寝たときにだけ無呼吸が悪化し、横向きで寝ると大きく改善する「体位依存性」のタイプも多く見られます。このような場合、横向きで眠る工夫や体位保持グッズの利用といった体位療法が、症状の軽減に役立つことがあります。ただし、どの対策が適しているかは重症度や原因によって異なるため、自己判断せず医療機関で確認することをお勧めします。
肥満型と非肥満型、特徴の違い
| 項目 | 肥満型SAS | 非肥満型SAS |
|---|---|---|
| 主な原因 | 首・喉まわりへの脂肪沈着 | 顎の骨格、扁桃肥大、鼻づまりなど |
| 国内患者に占める割合の目安 | 約6〜7割 | 約3〜4割 |
| 日中の眠気の自覚 | 比較的自覚しやすい | 自覚しにくい人が多いとされる |
| 有効な対策の傾向 | 減量が有効なことが多い | 減量の効果は乏しく、原因に応じた対策が必要 |
この表からも分かる通り、非肥満型は「気づかれにくい」という特徴があります。体型だけで自分を安全な側だと判断せず、いびきの指摘や体の特徴、日中の症状を総合的に見ていくことが大切です。
こんな場合は受診を検討してください
- 家族から、呼吸が数秒〜数十秒止まっていると指摘されたことがある
- 血圧の薬を飲んでいても、なかなか数値が下がらない
- 十分な睡眠時間を取っているつもりでも、朝から頭が重い、日中に強い眠気がある
- 夜間に何度もトイレに起きる
体型に関わらず、こうした症状が重なる場合は、一度検査を検討する価値があります。
当院でできること
当院は睡眠・アレルギーを専門とするオンライン診療クリニックで、まだ検査を受けたことがない方の新規診断・初回検査から、既にCPAP治療を受けている方の転院・継続管理まで対応しています。特にアレルギー性鼻炎による鼻づまりがある方は、鼻の治療とSASの治療を並行して検討することで、症状の改善につながる場合があります。
よくある質問
Q. 痩せているのに毎晩いびきをかきます。なぜですか?
A. 痩せ型の場合、脂肪ではなく顎の骨格や扁桃の大きさなど、構造的な要因が主な原因であることが多いとされています。
Q. 体重を減らせば痩せ型のSASも改善しますか?
A. 骨格が主な原因の場合、減量による改善はあまり期待できません。過度な減量はかえって筋力低下につながる可能性もあるため注意が必要です。
Q. 痩せ型でも治療の選択肢はCPAPだけですか?
A. 重症度や原因によって異なります。骨格が主な原因である軽症〜中等症の場合は、マウスピース(口腔内装置)が選択肢になることもあります。まずは検査で重症度を確認することが必要です。
鼻づまり・アレルギーとSASが気になる方へ
当院はアレルギー科と睡眠外来を組み合わせた診療を行っています。まだ検査を受けていない方の初回相談から、すでにCPAP治療を受けている方の転院・継続管理まで承っておりますので、お気軽にお問い合わせください。
CPAP転院・継続フォロー外来の詳細を見る →参考・出典
- 日本呼吸器学会・日本睡眠学会『睡眠時無呼吸症候群(SAS)診療ガイドライン 2020』
- 日本循環器学会 等『循環器領域における睡眠呼吸障害の診断・治療に関するガイドライン(JCS 2023)』
- Sakakibara H, et al. “Cephalometric abnormalities in nonobese and obese patients with obstructive sleep apnea.” Eur Respir J, 1999.
- 厚生労働省『令和8年度診療報酬点数表』
