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CPAP・睡眠時無呼吸症候群

夜中に何度もトイレで起きる(夜間頻尿)と睡眠時無呼吸|見落とされやすい関係

夜中に何度もトイレで起きる(夜間頻尿)と睡眠時無呼吸|見落とされやすい関係

夜中に何度もトイレで目が覚める方へ。夜間頻尿は前立腺だけの問題ではなく、睡眠時無呼吸が夜間の尿量を増やす仕組みが関わることがあります。前立腺・膀胱の治療で改善しない場合の考え方を整理します。

夜中に1回、2回、ときには3回以上トイレで目が覚める。眠りが浅くなり、日中の疲れが取れない——この「夜間頻尿」は、加齢や前立腺の問題として片づけられがちですが、それだけではありません。

夜間頻尿は「夜に作られる尿そのものが多い」「膀胱にためられない」「別の理由で目が覚めてトイレに行く」という複数の要素が重なって起こる症状です。睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、このうち「夜間の尿量が増える」ことと「夜に目が覚めやすくなる」ことの両方に関わり得ます。この記事では、その仕組みと、前立腺・膀胱の治療で改善しないときに睡眠を疑う理由を整理します。

夜間頻尿の原因は3つの機序に分けて考える

泌尿器科の考え方では、原因疾患を並べる前に、まず次の3つの機序に分けて評価します。原因はしばしば重複します。

  • 多尿・夜間多尿:加齢に伴う尿産生リズムの変化、夕方以降の飲みすぎ、アルコール・カフェイン、糖尿病、利尿薬、心不全や下肢のむくみ、腎機能、そして睡眠時無呼吸。膀胱の容量より「夜間に作られる尿量」が問題になる
  • 膀胱にためられない(蓄尿障害):過活動膀胱、前立腺肥大に伴う下部尿路症状、残尿など。1回量が少ない頻尿、日中の頻尿や尿意切迫が手がかり
  • 睡眠障害:睡眠時無呼吸、不眠など。「膀胱がいっぱいで起きた」のではなく「別の理由で目が覚めて、ついでに排尿した」ケースを含む

50〜70代では、前立腺肥大+夜間多尿+睡眠時無呼吸のように複数が重なっていることがむしろ一般的です。「前立腺肥大があるから夜間頻尿はそれで説明できる」とは限りません。

「年のせい」で片づけない

夜間多尿は高齢になるほど多くなります。夜間頻尿で医療機関を受診した患者を調べた日本の多施設研究では、夜間の尿量が1日尿量の33%を超える「夜間多尿」が67.4%に認められ、70代では66.5%、80歳以上では79.3%でした。ただしこれは受診した患者の集団の数字で、一般の同年代にそのまま当てはまるものではありません。

加齢に伴う夜間多尿には、抗利尿ホルモンの分泌リズムの変化、腎臓の尿を濃縮する働き、心血管系やむくみ、薬剤、睡眠障害など複数の要因が関わります。「加齢=抗利尿ホルモンが減るから」と一つの理由に決めつけるのは正確ではありません。

睡眠時無呼吸が夜間の尿を増やす仕組み

睡眠時無呼吸と夜間頻尿の関係は、「いびきで眠りが浅くなるからトイレに行く」だけではありません。生理学的には、次の経路が中心と考えられています。

① 気道がふさがったまま強く吸い込む → 胸の中の圧力が大きく下がる
睡眠時無呼吸では、上気道がふさがっている間も呼吸しようとする努力が続くため、胸腔内の圧力が大きく低下します。重症例では無呼吸のたびにマイナス50cmH₂Oを超える強い陰圧が生じ得るとされています。

② 心臓・心房への負担が変化する → ナトリウム利尿ペプチド(ANP)が出る
胸の中が強く陰圧になると、心臓に戻る血液量が増え、心房が引き伸ばされます。すると心房から「心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)」というホルモンが放出されます。ANPは腎臓でナトリウムの排泄を増やし、水分も一緒に出させるため、夜間の尿量が増えると考えられています。未治療の夜には尿量・ナトリウム排泄・ANPの働きを示す尿中物質が増え、CPAP治療でこれらが低下したという古典的な生理学研究があります。

③ 無呼吸に伴う覚醒でトイレに行く機会が増える
無呼吸から呼吸が再開するときに脳が短く目覚めます。「膀胱がいっぱいになったから起きた」のではなく、「無呼吸で起こされた後に尿意を感じて排尿した」という現象も起こり得ます。

なお、ここで働くホルモンは主にANPで、心不全の指標として知られるBNPとは分けて考える必要があります。腎臓の圧利尿など他の仕組みの関与を示す研究もあり、「ANPだけがすべての原因」ではありません。仕組みとしては「気道の閉塞 → 胸腔内圧の低下 → 心房への負担 → ナトリウムと水の排泄増加 → 夜間尿量が増える」に、「無呼吸による覚醒でトイレの回数が増える」が加わる、と理解するのが妥当です。

疫学:関連はあるが、数字は集団によって大きく違う

睡眠時無呼吸の患者では夜間頻尿がよくみられます。ある睡眠時無呼吸の集団では夜間頻尿の頻度が47.8%、「一晩2回以上」を夜間頻尿とした別の研究では男性35.2%・女性59.8%でした。睡眠時無呼吸と夜間頻尿の関連を統合したメタ解析では、睡眠時無呼吸がある人の夜間頻尿のリスクは対照の約1.4倍でした(男性で有意、女性では統計的にはっきりしませんでした)。

逆に、夜間頻尿で泌尿器科を受診した患者を調べた日本の小規模研究では、酸素飽和度の指標で7割に睡眠呼吸障害が疑われました。ただし34人という少人数で、睡眠検査ではなく酸素の指標で判定しているため、「夜間頻尿の人の7割が睡眠時無呼吸」と一般化することはできません。これらは因果を証明したものではなく、「睡眠時無呼吸の人には夜間頻尿が多く、統計的な関連がある」という段階の情報です。

「前立腺の薬を飲んでも夜のトイレだけ減らない」ときの考え方

前立腺肥大や過活動膀胱の治療をしても夜間頻尿が続く場合、睡眠時無呼吸を含む「夜間多尿」や睡眠の問題を再評価する理由になります。前立腺の薬は尿道の抵抗や膀胱の症状を対象にするもので、睡眠時無呼吸に伴う夜間の尿産生の増加や、無呼吸による覚醒には直接作用しないためです。

ただし、「薬が効かない=睡眠時無呼吸」ではありません。まずは排尿日誌(何時に何mL排尿したかの記録)で、夜間の尿量が本当に多いのか、1回量が少ない頻尿なのかを確認します。夜間の尿量が多いタイプで、いびきや日中の眠気などが重なる場合に、睡眠時無呼吸を鑑別に入れます。

CPAPで夜間の排尿は減るのか

睡眠時無呼吸に対してCPAP治療を行った後、夜間の排尿回数や夜間の尿量が減ったという研究は複数あります。5つの研究をまとめたメタ解析では、CPAP後に夜間排尿回数と夜間尿量の両方が有意に低下し、11の研究をまとめた別のメタ解析では夜間排尿回数が平均で1晩あたり約1.1回減少しました。

ただし、後者では研究ごとのばらつきが非常に大きく、質の高い無作為化比較試験では同じような有意な効果が示されていません。2023年のレビューも、関連は支持する一方で「夜間頻尿を目的にCPAPを行えば確実に改善する」というエビデンスは確立していないと評価しています。前立腺肥大、過活動膀胱、心不全、糖尿病などが併存していれば、睡眠時無呼吸を治療しても夜間頻尿が残ることがあります。「CPAPで夜間頻尿が治る」と言い切れる段階ではありません。

睡眠時無呼吸を疑う手がかり

  • 大きないびき、家族から呼吸が止まっている・あえいでいると指摘された、息苦しさで目が覚める
  • 日中の強い眠気、熟睡感がない、集中力の低下
  • 排尿日誌で夜間の尿量が多い(1回量が少ない頻尿とは分けて考える)
  • 前立腺・膀胱の治療をしても夜間頻尿だけが残る
  • 肥満気味・首まわりが太い
  • 高血圧、とくに薬を飲んでも下がりにくい高血圧、心血管疾患がある

眠気が乏しい睡眠時無呼吸もあるため「眠くないから大丈夫」とは言えません。また、下肢のむくみは睡眠時無呼吸に特有の症状ではなく、心不全・腎疾患・静脈のうっ滞などを考えるサインでもあります。むくみと息切れがある場合は、循環器・内科の評価を優先してください。

何科を受診するか、検査の流れ

排尿困難・残尿感・尿意切迫・日中の頻尿などもある場合は、泌尿器科が自然な入口です。排尿日誌、尿検査、残尿の評価などで、前立腺・膀胱の問題と夜間多尿を分けていきます。一方、大きないびき、目撃された無呼吸、日中の眠気、高血圧などが目立つ場合は、睡眠時無呼吸の診療・睡眠検査を行っている医療機関や呼吸器内科への受診・紹介が合理的です。鼻づまり、扁桃の腫れなどが目立つ場合は耳鼻咽喉科が関わります。

睡眠時無呼吸の検査は、まず自宅でできる簡易検査を行い、結果や症状に応じてへ進むのが一般的です。簡易検査は眠っていた時間を正確に測れないことがあり、重症度を低めに見積もる場合があるため、症状から疑いが強ければ詳しい検査を検討します。

やってはいけないこと・よくある誤解

よくある誤解・注意実際は
夜中に何度もトイレに行く原因は睡眠時無呼吸だ睡眠時無呼吸は原因の一つ。前立腺・膀胱、飲水、心臓・腎臓、糖尿病など複数が重なることが多い
加齢のせいだから仕方がない高齢ほど増えやすいが、治療・調整可能な原因が隠れていることがある
男性の夜間頻尿=前立腺肥大前立腺肥大は有力な一因だが、夜間尿量が多い場合は前立腺だけを治療しても十分改善しないことがある
水分を控えれば治る夜間多尿を伴う場合の飲水指導には推奨がある。ただし心不全・腎疾患・脱水・服薬などを無視した極端な自己流の制限はしない
利尿薬が原因なら自分でやめる利尿薬は高血圧・心不全などの治療に必要なことがある。自己判断で中止せず、薬の種類と服用時刻を医師に確認する
CPAPを使えば夜間頻尿が治る平均すると減る方向のメタ解析はあるが研究間のばらつきが大きい。他の原因が併存すれば残ることがある

いびきや日中の眠気を伴う夜間頻尿が続く場合は、睡眠中の呼吸状態を検査で確認する方法があります。当院ではオンラインで症状をうかがったうえで、ご自宅でできる検査をご案内しています。対象や受診の流れはいびき・日中の眠気 専門外来のページで、受診の目安の確認は睡眠時無呼吸セルフチェックでご確認いただけます。

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当院はいびき・日中の眠気に関するオンライン初診相談を承っており、必要に応じてご自宅でできる睡眠検査(簡易検査・在宅PSG)をご案内しています。前立腺・膀胱の治療を受けても夜間頻尿が続く方のご相談も可能です。

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※本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の診断・治療効果を保証するものではありません。夜間頻尿の原因や治療方針は個々の状態によって異なります。服用中の薬は自己判断で中止せず、担当医にご相談ください。CPAPの保険適用の基準は診療報酬改定により変わることがあり、実際の適用は受診先でご確認ください。
監修者の写真
監修
廣瀬 有紀子(ひろせ ゆきこ)
耳鼻咽喉科専門医・アレルギー専門医・日本医師会認定産業医
信州大学医学部医学科卒業。東京慈恵医科大学付属病院 耳鼻咽喉科ほか都内医療機関に勤務。日本睡眠学会、日本アレルギー学会、日本耳鼻咽喉科頭頚部外科学会、日本口腔・咽頭科学会 所属。
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