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CPAP・睡眠時無呼吸症候群

2026年6月からCPAPの保険適用はどう変わった?AHI基準・点数・使用時間ルールを解説

「CPAPの保険基準が変わったと聞いたけど、自分の治療にどう影響するの?」という方へ。2026年6月1日施行の令和8年度診療報酬改定の内容を、既存患者・新規検査患者それぞれへの影響に分けて整理します。

「CPAPの保険基準が変わったらしい」「AHIの数値がどう変わったのか知りたい」という声を、最近よく耳にするようになりました。実際、2026年6月1日から、CPAP治療に関する診療報酬のルールの一部が変わっています。この記事では、何がどう変わったのかを、すでにCPAPを使っている方これから検査を受ける方・以前「基準に届かない」と言われた方それぞれへの影響に分けて、厚生労働省の告示・通知・疑義解釈といった一次資料に基づいて整理します。

睡眠時無呼吸症候群(SAS)そのものの症状・原因・検査・治療の全体像は「睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは」で解説しています。

2026年6月1日からCPAPの保険ルールは何が変わったか

まず結論からお伝えすると、今回の改定の適用開始日は2026年6月1日です。「4月から変わった」という説明を見かけることがありますが、令和8年度診療報酬改定に関する告示・通知は2026年3月5日に発出されたものの、実際に新しい点数・基準が適用されるのは6月1日からです。

CPAP保険適用の判断基準(AHI)が見直された

CPAP治療は「在宅持続陽圧呼吸療法(正式な区分番号:C107-2 在宅持続陽圧呼吸療法指導管理料)」として健康保険の対象になっています。この対象患者の基準となる無呼吸低呼吸指数()の目安が、2026年6月1日から次のように変わりました。

  • 改定前:精密検査()でAHI20以上(自覚症状・PSG所見等の要件あり)。AHI40以上ではPSG所見等の要件が簡略化される扱い。
  • 改定後(2026年6月1日〜):原則としてAHI15以上に加え、日中の傾眠・起床時の頭痛など強い自覚症状で日常生活に支障があること、PSGで頻回の無呼吸に伴う睡眠分断・深睡眠の著しい減少などが確認されCPAPによる改善が見込まれることが要件です。AHI30以上の場合は、このうちPSG所見の要件が簡略化され、自覚症状の要件を満たすことで対象となります。

「簡易検査でAHI30以上」「PSGでAHI15以上」という整理は、患者向けの目安としては概ね正しいのですが、数値だけで自動的に保険適用が決まるわけではありません。AHI15以上・30以上は保険適用を判断する基準の一つであって、自覚症状の強さやPSGの所見なども合わせて医師が確認します。「AHIが15を超えたので誰でも保険でCPAPが使える」というものではない点にご注意ください。

AHIそのものの意味や、精密検査(PSG)と自宅でできる簡易検査で数値の性質が異なる点については、AHIとは?数値の意味と正常値・注意すべきラインを解説、簡易検査とPSGの違いは自宅でできる睡眠時無呼吸の検査とは|簡易検査とPSG検査の違いで詳しく解説しています。

管理料が250点→240点に、新しい加算も新設

CPAPの継続管理にかかる「在宅持続陽圧呼吸療法指導管理料2」の点数も見直されました。対面診療の場合は250点から240点に、情報通信機器(オンライン診療)を用いた場合は218点になっています。3割負担では、対面の管理料単体で見ると1回あたり数十円程度の負担減にとどまり、家計に大きく影響する変更ではありません。

あわせて、医療機関側の新しい加算として「持続陽圧呼吸療法充実管理体制加算」(15点)が新設されました。これは患者さんが直接算定する項目というより、医療機関がCPAP使用状況をきちんとモニタリングする体制を整えていることに対する施設側の加算です。この加算の有無によって、窓口負担が数十円程度変わることがあります。

すでにCPAPを使っている人への影響

現在CPAPを使用している方にとって、今回の改定で気になるのは「今の治療が続けられなくなるのでは」という点だと思います。結論からお伝えすると、AHI基準が20→15、40→30へ引き下げられたこと自体によって、現在治療中の方が対象外になることはありません。基準は緩和される方向の変更だからです。

一方で、既存の患者さんにとってむしろ関係が深いのは、CPAPの使用時間に関するルールが明確になったことです。2026年6月からは、管理料を算定しようとする月の直近3か月がすべて「1日平均使用時間1時間未満」に該当する場合、在宅持続陽圧呼吸療法指導管理料2を算定できないという規定が加わりました(CPAPを開始してから3か月以内の方は対象外です)。

この規定は「毎日1時間以上使わないと保険が切れる」という意味でも、「月平均4時間以上必要」という意味でもありません。問題になるのは、直近3か月がすべて1日平均1時間未満だった場合だけです。実際、2026年9月2日付の厚生労働省の疑義解釈(その12)では、直近3か月のうち1か月でも1日平均使用時間が1時間以上であれば、他の月に1時間未満の月が含まれていても管理料を算定できることが明確化されています。

なお、この使用時間の集計方法(歴月で数えるか、直近30日で数えるか)については、2026年5月29日付の疑義解釈で、医療機関が通常用いている方法でよいとされています。ただし、同じ医療機関の中で患者ごとに計算方法を変えることは認められず、医療機関全体で同じ集計期間を使う必要があります。

ここで一つ注意していただきたいのは、「1日4時間以上・月20日以上使用した月の割合が40%以上」という基準は、患者さん個人が保険を継続するための基準ではなく、医療機関が前述の「持続陽圧呼吸療法充実管理体制加算」(15点)を算定するための、施設側の実績要件だということです。この二つを混同すると「毎月20日、4時間以上使わないと保険が切れる」という誤解につながりやすいため、当院では明確に分けてご説明しています。

現在CPAP治療を受けていて、通院の負担や機器の使用状況について相談したい方は、CPAP転院・オンライン継続フォローのページもあわせてご確認ください。

これから検査を受ける人・以前「基準に届かない」と言われた人への影響

「以前、簡易検査や精密検査を受けたが、AHIが基準に届かずCPAPは保険適用外と言われた」という方にとって、今回の改定は関係する可能性があります。旧基準ではAHI20未満(PSG)・40未満(簡易検査)だと対象外とされていましたが、改定後の要件では、AHI15〜19やAHI30〜39の方でも、自覚症状やPSG所見などの要件を満たせば対象となる余地が生まれています。

ただし、ここでも重要な注意点があります。「AHI15〜19だった人は全員、新たに保険適用になった」「簡易検査でAHI30〜39ならそのまま全員CPAP」という理解は正確ではありません。自覚症状の強さやPSGの所見といった要件は残っているためです。過去の検査結果をそのまま利用できるか、再検査が必要かも、症状の経過や検査内容によって異なります。過去に「基準に届かない」と言われた経験がある方も、当時の検査結果を持参のうえで、現在の基準に照らして改めて相談する価値があります。

これから検査を受けたい方、健診や他院の簡易検査でSASを指摘された方は、いびき・日中の眠気 専門外来でオンライン初診相談から自宅でできる検査までご案内しています。

医学的な重症度分類と、保険の適用基準は別物

混同されやすい点として、「医学的な重症度分類」と「保険診療上の算定要件」は別の概念です。日本呼吸器学会の一般向け解説では、PSGのAHIについて、5以上15未満を軽症、15以上30未満を中等症、30以上を重症としています。これはあくまで医学的な診断・重症度の分類であり、CPAPを保険診療で算定できる条件そのものではありません。診療報酬上は、AHIに加えて症状やPSG所見、CPAP導入後の使用状況などの条件が別途定められています。「中等症だから保険でCPAPになる」「軽症だから保険は使えない」と単純に対応づけることはできません。

オンライン診療でCPAPを継続する場合

CPAPをオンライン診療で継続管理する場合にも、いくつか知っておきたい制度上のポイントがあります。

現行の制度では、オンラインでCPAP管理を行う患者さんについて、CPAP療法によって眠気やいびきなどの症状が改善していることを、あらかじめ対面診療で確認済みであることが求められます。そのうえでオンライン診療時にCPAPの使用データなどを確認し、必要に応じて対面診療を組み合わせる、という位置づけです。

また、診察と診察の間の期間について通信機能付きの機器で使用状況を遠隔で確認した場合に評価される「遠隔モニタリング加算」(150点)という仕組みもあり、最大2か月分までまとめて評価される規定があります。そのため、「CPAP患者は制度上、必ず毎月対面で通院しなければならない」という理解は正確ではなく、診察の間隔は患者さんの状態や医療機関の管理方法によって異なります。

なお、新たにCPAP治療を始める方については、導入した直後の対面診察だけでは「CPAPによる症状改善」をまだ確認できないため、当院では、CPAP導入時の対面診察に加えて、数か月後にも改善状況を確認するための対面診察を行い、そのうえでオンライン中心の継続フォローへ移行する流れをとっています。すでに安定してCPAPを使用中で転院を検討されている方とは、対面が必要になるタイミングが異なる点にご留意ください。

よくある誤解

Q. AHIが15以上ならCPAPは誰でも保険適用になりますか?

A. いいえ。AHI15以上(簡易検査では30以上)は保険適用を判断する基準の一つですが、それだけで自動的に決まるものではありません。自覚症状の強さやPSGの所見なども合わせて医師が確認します。

Q. CPAPを毎日4時間以上使わないと、すぐ保険が使えなくなりますか?

A. いいえ。個人の患者さんに関わる制限は「直近3か月すべてが1日平均1時間未満だった場合」に管理料が算定できなくなる、というものです。「1日4時間以上・月20日以上」という基準は、医療機関側が別の加算を算定するための施設基準であり、患者さん個人の継続条件ではありません。

Q. 2026年4月から基準が変わったと聞きましたが?

A. 正しくは2026年6月1日からです。告示・通知の発出日(2026年3月5日)と適用開始日が異なるため混同されやすい点です。

Q. オンライン診療なら一度も対面に行かなくてもCPAPを続けられますか?

A. いいえ。CPAP導入時、および症状改善を確認する対面診療は必要です。安定した後の継続フォローはオンライン中心にできますが、「一度も対面不要」ではありません。

自分が対象になるか確認するには

ご自身がCPAP治療の保険適用対象になるかどうかは、検査方法(簡易検査かPSGか)、実際のAHI・REIの数値、自覚症状の有無や強さ、過去の検査結果、現在の使用状況などを総合的に確認する必要があります。この記事では制度の一般的な内容を解説していますが、個別の適用可否については、検査結果をもとに医師にご相談ください。

現在CPAPを使用中で転院・継続フォローを検討している方はCPAP転院・オンライン継続フォロー、まだ検査を受けていない方はいびき・日中の眠気 専門外来から、それぞれご相談いただけます。

※本記事は2026年9月17日時点で確認できた診療報酬の告示・通知・疑義解釈に基づく一般的な情報提供を目的としており、特定の患者さんの保険適用可否・治療効果を保証するものではありません。診療報酬・算定基準は今後の改定等により変更される場合があります。個別の適用可否・費用については、受診先の医療機関にご確認ください。
監修者の写真
監修
廣瀬 有紀子(ひろせ ゆきこ)
耳鼻咽喉科専門医・アレルギー専門医・日本医師会認定産業医
信州大学医学部医学科卒業。東京慈恵医科大学付属病院 耳鼻咽喉科ほか都内医療機関に勤務。日本睡眠学会、日本アレルギー学会、日本耳鼻咽喉科頭頚部外科学会、日本口腔・咽頭科学会 所属。
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