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CPAP・睡眠時無呼吸症候群

眠れているはずなのに疲れが取れない|不眠と無呼吸の違い

睡眠時間は足りているのに朝から疲れている方へ。「眠れない」不眠症と「眠っているのに回復しない」睡眠時無呼吸症候群の違いを、症状・原因・治療法の面から整理します。

「毎晩7〜8時間は寝ているはずなのに、朝から体がだるい」「寝つきは悪くないのに、日中に強い眠気が来る」——このように感じている方の中には、「眠れているのだから不眠ではない」と考え、原因を探すのをやめてしまう方がいます。しかし、睡眠時間の長さと、睡眠の質・回復感は同じものではありません。この記事では、「眠れない」ことが中心の不眠症と、「眠っているのに呼吸が乱れて回復しない」睡眠時無呼吸症候群(SAS)の違いを、症状・原因・治療法の面から整理します。どちらか一方に決めつけず、両方が同時に存在する場合があることも説明します。

「眠気」「疲労」「不眠」は同じ感覚ではない

「疲れている」という表現には、実は異なる感覚が混ざっていることがあります。眠気は、意図せず眠ってしまいそう、目を開けていられない、単調な会議や運転中に居眠りしそうというように、睡眠そのものへの強い欲求に近い感覚です。一方、疲労・倦怠感は、体が重い、やる気が出ない、休んでも回復しない、集中が続かないという感覚で、必ずしも眠気が中心とは限りません。

この区別は、家庭で診断名をつけるためのものではありません。日中の眠気が強く、運転や危険な作業に支障がある場合は、安全の観点から早めの相談が必要になります。一方、眠気よりも気分の落ち込み、息切れ、動悸、発熱、体重の急な変化、痛みなどが前面にある場合は、睡眠の問題だけに絞らず、内科や精神科などを含めた評価が必要になることもあります。

不眠症とSASの違い(比較表)

不眠症は、入眠困難・中途覚醒・早朝覚醒など「眠れない」ことが中心の訴えです。一方、SASは睡眠中に無呼吸・低呼吸が繰り返し起こる病態で、本人は「眠れている」と感じていても、呼吸の乱れによって睡眠が細かく分断され、回復感が乏しくなることがあります。両者は次のように整理できます。

観点不眠症でみられやすい訴えSASでみられやすい訴え
夜の自覚寝つけない、何度も目が覚める、早く目覚める本人は気づかないこともある。あえぎ・窒息感で起きる人もいる
家族の観察通常は決め手になりにくい大きないびき、静かな間、あえぎ、体動
朝の状態眠れなかった感覚、考えが止まらない口の渇き、頭重感・頭痛、熟睡感のなさ
昼の状態疲労、集中しにくさ、眠ろうとしても眠れない不安居眠り、強い眠気、集中力の低下
評価方法睡眠習慣、心理・身体要因の確認簡易検査・で呼吸イベントを評価

この表は「どちらか一方」を決めるためのものではありません。SASの方が「夜に何度も目が覚めるから不眠だ」と感じることもありますし、不眠症の方が疲労で日中ぼんやりすることもあります。また、いびきがない・肥満でないという理由だけでSASを否定することもできません。日本人を含む東アジア系の方は、小顎・下顎後退といった骨格的特徴により、肥満でなくてもSASを発症しやすいことが知られています。

治療法の違い:睡眠薬とCPAPは別のもの

不眠症とSASでは、標準的な治療の考え方が異なります。不眠症では、生活習慣の見直しや認知行動療法に加え、医師の判断のもとで睡眠薬が使われることがあります。一方、SASの中心的な治療は、CPAP(経鼻的持続陽圧呼吸療法)や、軽症〜中等症の一部で検討される口腔内装置(マウスピース)であり、上気道の閉塞そのものに対処するものです。睡眠薬はこの閉塞を解消する薬ではありません。

ここで特に注意したいのが、「眠れない」という訴えに安易に睡眠薬を使うことの危険性です。SASのある方は、睡眠が分断されるために不眠のような症状(寝つきの悪さ、中途覚醒)を訴えることがあります。しかし、無呼吸のある方に睡眠薬・鎮静作用のある薬を投与すると、上気道を保つ筋肉の働きがさらに弱まり、呼吸抑制が悪化するおそれがあります。SAS患者が訴えやすい不眠症状に対して、オンライン診療の初診で睡眠薬などの向精神薬を処方することは、厚生労働省の指針上禁止されています。これは、無呼吸の評価を経ないまま鎮静作用のある薬を処方することの危険性を踏まえた制度上の仕組みです。

つまり、「眠れないから睡眠薬」という短絡的な対応は、背景にSASがある場合にはかえって危険になりえます。不眠の訴えがある場合こそ、睡眠中の呼吸に問題がないかを確認したうえで、適切な治療方針を検討することが重要です。

不眠とSASが同時に存在するケース(COMISA)

不眠症状とSASが併存する状態は、医学的にCOMISA(comorbid insomnia and sleep apnea)と呼ばれます。「寝つけない」「何度も目が覚める」という強い不眠の訴えがありながら、いびき・呼吸停止・日中の眠気などからSASも疑われる方が該当します。この考え方を知る意義は、「眠れないから無呼吸ではない」「無呼吸を治療すればすべての不眠症状が直ちに消える」といった単純化を避けることにあります。

併存を扱う研究は、睡眠外来を受診した集団などが対象になっていることが多く、一般の方全体でどの程度の割合で併存するか、また全員に共通する治療の順序を一律に決めるものではありません。そのため、「SASが確認されたらCPAPだけ」「不眠ならとにかく睡眠薬」と単純に考えるのではなく、医師が呼吸の評価、睡眠習慣、心身の背景を総合して治療方針を検討する必要があります。

不眠・SAS以外の原因も考えられる

疲労や眠気は、特定の病気に限られない、幅の広い症状です。睡眠時間の不足や交代勤務、気分の落ち込みや不安、貧血、甲状腺機能の異常、感染症・慢性的な炎症、痛み、薬剤の影響、むずむず脚症候群などが、睡眠や日中の回復感に影響することもあります。「疲れが取れない」という症状だけで睡眠時無呼吸と決めつけず、他の要因の可能性も念頭に置くことが大切です。

特に、急な強い胸痛、呼吸困難、失神、片側の麻痺やろれつが回らない、高熱が続く、といった急性・重大な症状がある場合は、睡眠に関する自己チェックで様子を見る対象ではなく、医療機関・救急相談の対象になります。

受診前に記録しておきたいこと

医師に症状を正確に伝えるために、次のような点を記録しておくと、初回の相談がスムーズになります。

  • 平日・休日の就床時刻、起床時刻、昼寝の有無
  • 夜の困り方(寝つけない、中途覚醒、早朝覚醒、あえぎ)
  • 家族が見たいびき・静かな間・あえぎ・体位
  • 朝の状態(頭痛、口の渇き、疲労感、気分)
  • 日中の状態(居眠りする場面、運転時の眠気、集中力)
  • 体重の変化、鼻炎、飲酒、服薬中の薬、勤務形態、既往症

睡眠アプリやスマートウォッチの「睡眠スコア」は、生活パターンを振り返る補助にはなりますが、無呼吸・血中酸素濃度の低下・睡眠段階を診断する代わりにはなりません。アプリの数値と実際の体感が異なる場合も、どちらかを誤りとして排除せず、両方を診察の際に伝えることをおすすめします。

日中の眠気と運転・仕事の安全

日中に強い眠気があり、運転中や機械の操作中、高所での作業中などに眠り込みそうになる場合は、無理をして通常どおり行動することは避けてください。原因が不眠症であってもSASであっても、事故につながる危険があるため、危険な作業をいったん避け、早めに相談することが優先されます。

「よく眠った気がする」人でも見落とされることがある

SASのある方の中には、寝つきが早く、夜中のこともあまり記憶しておらず、「不眠ではない」と感じている方もいます。それでも、家族は呼吸停止らしい様子を見ており、本人は朝の頭痛、口の渇き、夜間の頻尿、日中の居眠りを抱えていることがあります。つまり、睡眠の自覚(よく眠れた気がするかどうか)だけで、睡眠中の呼吸に問題がないと判断することはできません。反対に、不眠の訴えが強い方は「眠れないから日中疲れるのは当然」と考え、いびきやあえぎを見過ごしてしまうことがあります。どちらの立場でも、睡眠の量だけでなく、睡眠中の呼吸、目覚め方、日中の安全を確認することが重要です。

検査とオンライン診療の位置づけ

安定した状態で、いびき・呼吸停止の目撃・日中の眠気などを相談したい場合、医師が適切と判断すればオンライン初診と自宅でできる検査(簡易検査・在宅PSG)が入口になることがあります。ただし、不眠の訴えが強い方では、簡易検査は実際に眠っていた時間ではなく記録時間をもとに呼吸イベントの頻度()を算出するため、寝付けずに長く横になっていた場合、無呼吸・低呼吸の頻度を実際より低く見積もる(過小評価する)ことがあります。検査結果が軽度・陰性であっても、症状が強く残る場合は、検査の限界とあわせて医師に伝えることが大切です。

オンライン診療は、忙しい方が相談の入口を作る方法として活用できますが、医師が対面での評価が必要と判断した場合は、対面診療へ切り替えます。また前述の通り、無呼吸の評価を経ずに睡眠薬をオンライン初診で処方することはできません。まずは睡眠中の呼吸状態を含めて確認することが、安全な治療方針の第一歩になります。検査の種類による違いは自宅検査とPSGの違いで詳しく説明しています。

いびき・日中の眠気が気になる方へ

オンラインでの初診相談から、ご自宅でできる検査までを承っています。対面が必要になるのはCPAP導入が必要と判明した場合のみで、その際は新宿駅から徒歩6分の新宿院でご案内します。「眠れているのに疲れが取れない」という感覚だけでも、まずはご相談ください。

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よくある質問

Q. 8時間寝ているのに眠いなら、睡眠時無呼吸症候群でしょうか。

A. そうとは限りません。睡眠の質、生活リズム、不眠症状、薬の影響、身体・気分の問題なども関与することがあります。ただし、いびきや呼吸停止の目撃、朝の頭痛、日中の居眠りが重なる場合は、SASを含めて相談することをおすすめします。

Q. 寝つけないので、無呼吸ではないですよね。

A. 不眠症状とSASは併存することがあります(COMISA)。眠れない訴えがあっても、夜の呼吸や日中の眠気を確認し、必要であれば両方を評価します。

Q. いびきがないので無呼吸ではないですか。

A. いびきは重要な手がかりですが、ないことだけで否定はできません。家族の観察、日中の症状、体型・鼻の症状・既往などをあわせて医師が評価します。

Q. 疲れているだけでも相談してよいですか。

A. 問題ありません。疲労の背景は幅広いため、睡眠時間、夜の症状、日中の眠気、体調・勤務・服薬を整理してご相談いただくことで、適切な相談先や検査を検討しやすくなります。

※本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の症状の診断や治療効果を保証するものではありません。強い気分の落ち込みや不安、急性の身体症状がある場合は、睡眠の相談を待たず、適切な医療機関にご相談ください。検査方法・対面診療の要否は、症状や既往を踏まえて医師が判断します。
監修者の写真
監修
廣瀬 有紀子(ひろせ ゆきこ)
耳鼻咽喉科専門医・アレルギー専門医・日本医師会認定産業医
信州大学医学部医学科卒業。東京慈恵医科大学付属病院 耳鼻咽喉科ほか都内医療機関に勤務。日本睡眠学会、日本アレルギー学会、日本耳鼻咽喉科頭頚部外科学会、日本口腔・咽頭科学会 所属。
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