健康経営優良法人の認定と「睡眠」|従業員の睡眠指標をどう取組みとして示せるか

令和8年度の健康経営度調査で「睡眠の質向上に向けた取り組み」が独立設問(Q55)として新設されました。どの設問に睡眠施策を対応させられるのか、大規模法人部門・中小規模法人部門の違いや記録として残すべき項目を整理します。
「睡眠に関する取組を始めたが、これが健康経営優良法人の認定申請でどう評価されるのか分からない」。健康経営を担当していると、こうした壁に必ず突き当たります。調査票には「睡眠」という言葉自体は出てくるのに、どの設問に、どう対応させればよいのかが見えにくいためです。
結論から言うと、睡眠施策の実施だけで加点や認定が確約される仕組みはありません。しかし、健康経営度調査票・認定申請書を設問単位で読み解くと、睡眠関連の取組を根拠として記載できる箇所は明確に存在します。本稿では、2026年8月17日に公開された令和8年度健康経営度調査(健康経営優良法人2027・大規模法人部門)の確定調査票に基づき、睡眠指標をどの設問に、どのような記録とともに示せばよいかを整理します。
令和8年度調査での最大の変更点:睡眠が独立設問(Q55)になりました
令和7年度まで「従業員の生産性低下防止のための施策」(旧Q56)の選択肢の一つだった睡眠が、令和8年度調査では Q55「従業員の睡眠の質向上のために、どのような取り組みを行っていますか」 という独立した設問として新設されました。選択肢には、睡眠時無呼吸症候群(SAS)の検査実施が明記されています。
あわせて、Q77のテーマ別ベストプラクティス選定でも「睡眠の質向上に向けた取り組み」が取り組み分類の一つとして立てられました。睡眠は「他のテーマの中に含まれる要素」から「単独で問われるテーマ」へ位置づけが変わっています。
独立設問にはなったが「必須要件」ではない
まず前提を正確にしておきます。Q55として独立設問にはなりましたが、健康経営優良法人2027(大規模法人部門)の認定要件一覧を見ると、「睡眠施策の実施」という単独の必須項目や選択要件は令和8年度も存在しません。認定要件の文書中に「睡眠」という語自体が一度も登場しない、というのが正確なところです。大規模法人部門は必須要件を満たした上で①〜⑰の評価項目のうち14項目以上(ホワイト500は①を必須としたうえで②〜⑰のうち14項目以上)、中小規模法人部門は健康宣言などの必須要件に加え、区分ごとに定められた数の選択要件を満たす構造になっており、睡眠はこの①〜⑰そのものではなく、複数の設問に「関わり得るテーマ」として位置づけられています。
「睡眠プログラムを導入すれば認定される」という説明は誤りです。正しくは、「睡眠という健康課題を、既存の評価項目の文脈で説明できるかどうか」が問われている、という理解が実務上安全です。
大規模法人部門:睡眠が明記されている設問
令和8年度の健康経営度調査票では、睡眠は複数の設問に具体的に登場します。
Q55(睡眠の質向上に向けた取り組み/新設) は、「従業員の睡眠の質向上のために、どのような取り組みを行っていますか」という複数回答の設問です。選択肢は次の9つで構成されています。
- リフレッシュルームや仮眠室を設置している
- パワーナップ等仮眠制度を導入している
- 執務室内の照明を工夫している(サーカディアン照明の設置、昼食後の消灯等)
- 睡眠時無呼吸症候群の検査(スクリーニング含む)を実施している(費用補助を含む)
- 睡眠改善や休憩取得を促すアプリ等を利用できるようにしている
- 睡眠改善を目的としたウェアラブルデバイス等を配布している(費用補助を含む)
- 産業医・臨床心理士・保健師等による睡眠関連指導を実施している
- その他/特に行っていない
自宅睡眠チェックやSASスクリーニングを導入している場合、この設問への回答材料として最も直接的に使えます。費用補助という形での関与も選択肢に含まれているため、検査そのものを自社で運営していなくても回答対象になり得ます。
ただし注意点があります。令和8年度調査票では、必須設問には「★」、認定要件かつ選択設問には「■」、健康経営銘柄2027およびホワイト500の認定要件に係る設問には「◎」が付されていますが、Q55にはいずれの記号も付いていません。また、認定要件として列挙されている評価項目(①〜⑰)にも睡眠の項目は含まれていません。つまり「Q55に回答したから認定要件を1つ満たせる」という関係ではなく、個別の配点も公表されていません。この点は社内説明の際に誤解が生じやすいところです。
なお、令和7年度まで睡眠が置かれていた「従業員の生産性低下防止のための施策」(Q56)は、令和8年度では肩こり・腰痛等の筋骨格系、アルコール依存症、花粉症、眼精疲労への支援で構成され、睡眠は含まれなくなりました。昨年度の回答をそのまま流用すると、睡眠施策の記載先が抜け落ちる可能性があります。
睡眠が独立設問として切り出された背景を理解しておくと、回答の書きぶりも整理しやすくなります。閉塞性睡眠時無呼吸()の自覚症状として日中の眠気だけでなく「集中力の低下」を挙げる患者が一定数存在することは、学会のガイドラインでも指摘されています。SASスクリーニングは単なる健康診断項目の追加ではなく、生産性リスクの把握という文脈で説明できる施策だと整理しておくと、Q55だけでなく後述のQ32・Q69にも一貫した記述ができます。
なお、実務担当者が混同しやすい点として、自宅で行う簡易検査の結果は、厳密には(精密検査で算出される無呼吸低呼吸指数)ではなく、(呼吸イベント指数)と呼ぶのが正確です。簡易検査は実際の睡眠時間を測定できないため、算出される指数は精密検査に比べて数値を過小評価しやすいという特性があります。社内資料でこの数値を扱う際は、「簡易検査(REI)」「精密検査(AHI)」を区別して記載すると、誤解を招きません。
対象者の選び方にも注意が必要です。SASは肥満との関連が知られていますが、日本人は骨格的な特徴により、肥満のない従業員でも発症することがあります。体型を基準にスクリーニング対象を絞ると、実際にリスクを抱える従業員を見落とす可能性があるため、全従業員を対象にするか、体型ではなくいびき・日中の眠気などの症状の有無を基準に案内する設計が望ましいといえます。
Q62(従業員の健康診断の結果) では、健診問診等による生活習慣・健康状態の把握指標の一つとして「『睡眠により十分な休養が取れている人』の割合」が挙げられています。従業員向けの睡眠休養感アンケートを匿名集計すれば、この指標をそのまま裏付けるデータになります。
Q38(従業員への教育) の教育内容候補には「睡眠」が明記されています。社内勉強会や睡眠セミナーはこの設問に対応しますが、同設問の内訳(SQ1)は「当設問は評価に使用しません」と明記されており、「睡眠をテーマにしたから加点される」わけではありません。重要なのは、対象者数・参加率を把握し、記録していることです。教育そのものを実施していない場合は評価項目不適合と明記されている点は見落とされがちです。
Q32(健康経営の具体的な推進計画・数値目標) と Q69(健康経営の実施施策についての効果検証) は、いずれも必須設問(★)です。Q32の課題テーマ選択肢には「従業員の生産性低下防止・事故発生予防(肩こり・腰痛等の筋骨格系の症状や、睡眠不足の改善、転倒の予防)」が含まれ、Q69は効果検証の対象例として「睡眠時間」を明示しています。しかもQ69は、取り組み結果しか把握していない場合を「健康経営優良法人不認定」と明記しています。つまり、睡眠施策を単発のイベントで終わらせず、「課題として設定し」「実施し」「効果を検証し」「翌年度に改善する」という一連のサイクルを記録できているかどうかが、最も重要な評価軸になります。
令和8年度で新たに加わった Q77(テーマ別ベストプラクティス選定へのエントリー) も見逃せません。エントリー時の取り組み分類に「睡眠の質向上に向けた取り組み」が独立した選択肢として設けられ、実施内容・創意工夫した点・実施前後の定量的な変化を記述する構成になっています。睡眠を軸に自社の取組を対外的に打ち出す枠が用意された、と読めます(エントリーには健康経営優良法人の認定が前提です)。
取組と設問の対応関係を一覧で把握する
睡眠関連の取組が、どの設問にどの程度対応するのかを一覧化すると、社内での説明資料としても使いやすくなります。
| 取組 | 大規模法人部門(令和8年度調査票) | 中小規模法人部門(令和8年度申請書) |
|---|---|---|
| SASリスクチェック・検査 | Q55(新設)にSAS検査が明記。費用補助も対象 | Q48(a)にSAS検査が明記。ただし任意設問で認定審査には不使用 |
| 睡眠研修・社内勉強会 | Q38に明記(参加率把握が前提) | Q14またはQ15の健康教育に含め得る。Q48(a)に睡眠セミナーの明記あり(任意設問) |
| 睡眠時間・休養感アンケート | Q62・Q69に直接記載 | 必須のQ10(課題テーマに「睡眠不足の改善」)。ブライト等はQ37で関連 |
| 匿名・統計化レポート | Q32・Q62・Q69の計画・把握・検証の材料 | Q10・Q32、上位区分Q37のPDCA材料 |
| 集計結果に基づく施策改善 | Q69で直接要求(必須設問) | Q32で直接要求(必須) |
| 睡眠を軸にした対外発信 | Q77のベストプラクティス分類に「睡眠の質向上に向けた取り組み」 | Q54のベストプラクティス分類(ブライト500申請が前提) |
※いずれも令和8年度(健康経営優良法人2027)の確定版に基づく設問番号です。大規模法人部門は令和7年度から番号が繰り上がっている設問が多く、旧Q56(睡眠を含む生産性低下防止)→新Q55(睡眠のみ独立)、旧Q64→新Q62、旧Q71→新Q69、旧Q33→新Q32、旧Q39→新Q38、旧Q36→新Q35、旧Q53→新Q52と対応します。大規模法人部門と中小規模法人部門は別の様式で、設問番号に互換性はありません。
この表からも分かる通り、大規模法人部門では睡眠が評価対象の設問(Q55)として独立している一方、中小規模法人部門で睡眠を直接名指しした選択肢が並ぶQ48は認定審査に使用されない任意設問です。中小規模法人部門で認定審査に効いてくるのは、あくまで必須のQ10・Q32で睡眠を「課題として設定し、評価・改善した」と示せるかどうかです。この非対称性を理解せずに、大規模法人部門向けの説明資料をそのまま中小規模法人部門の申請に流用すると、設問との対応が弱くなる点に注意してください。
中小規模法人部門:睡眠は「必須設問の課題テーマ」と「任意設問」に分かれて登場する
中小規模法人部門は大規模法人部門とは別の申請書(健康経営優良法人2027・中小規模法人部門 認定申請書)を使い、設問体系も番号もまったく異なります。令和8年度の申請書では、睡眠は次の3か所に登場しますが、認定審査上の重みがそれぞれ違う点に注意が必要です。
まず Q10(健康経営の具体的な推進計画/必須要件) です。SQ2で「健康経営を通じて解決したい課題」を選ぶ際の課題テーマ一覧に、「従業員の生産性低下防止・事故発生予防(肩こり、腰痛等筋骨格系の症状や、睡眠不足の改善、転倒予防等)」が含まれています。中小規模法人部門で睡眠を正面から位置づけられる、唯一の必須設問がここです。
次に Q48(従業員の生産性低下防止のための取り組み) です。「<a.睡眠障害や、業務中の眠気による生産性の低下予防>」という区分が設けられ、仮眠室、パワーナップ制度、照明の工夫、睡眠に関するセミナー、睡眠時無呼吸症候群の検査(スクリーニング含む)の実施(費用補助を含む)、睡眠改善アプリ、ウェアラブルデバイス、産業医等による睡眠関連指導が選択肢として並びます。大規模法人部門のQ55に近い内容です。ただし申請書ではQ41以降の回答は任意とされ、「認定審査には使用しません」と明記されています。実施状況を棚卸しする価値はありますが、要件充足の根拠にはなりません。
3つ目が Q54(テーマ別ベストプラクティス選定) で、取り組み分類に「睡眠の質向上に向けた取り組み」が独立した選択肢として設けられました。ただしエントリーには、健康経営優良法人の認定に加えてブライト500への申請が必須です。
中小規模法人部門の認定要件は「①〜③から2項目以上」「④〜⑩から2項目以上」「⑪〜⑰から4項目以上」という3つのグループ構造になっており、この①〜⑰の評価項目に睡眠固有の項目はありません。睡眠研修は④〜⑩グループの健康教育(Q14またはQ15)に含め得ますが、このグループには運動・食生活・禁煙・メンタルヘルスなど他の選択肢も並んでおり、睡眠だけを取り出して要件充足の根拠にする必要はありません。むしろ、既に実施している他の生活習慣施策と並べて「健康教育の一環」として整理するほうが自然です。
一方、ブライト500・ネクストブライト1000という上位区分向けのPDCA設問(Q37)でも、評価対象とする課題のテーマ一覧に「睡眠不足の改善」が含まれています。上位認定を目指す場合は、Q10で睡眠を経営課題として設定し、Q37で同じ課題の評価・改善を示すという一貫した設計が有効です。通常認定とブライト以上で睡眠の扱いに差があることは、担当者の間でも意外と整理されていません。
受診勧奨から治療・就労継続へ:2026年度の制度変化を踏まえる
Q35(大規模)・Q12(中小規模)の受診勧奨は、「案内して終わり」ではなく、実際に治療につながり、就労を継続できているかまでを視野に入れると、施策としての説得力が増します。ここで押さえておきたいのが、2026年度の制度変化です。
令和8年度の診療報酬改定により、CPAP治療の保険適用基準が緩和されました。簡易検査(REI)で30以上、精密検査(AHI)で15以上(諸条件あり)であれば治療対象となり、従来「中等症だから経過観察」とされていた従業員も、早期に治療を開始できる可能性が広がっています。受診勧奨後の「その先」がスムーズになったことは、施策設計の背景として記録しておく価値があります。
また、同じ2026年度改定で、従来は対象疾患が限定されていた「療養・就労両立支援指導料(B001-9)」の疾患要件が撤廃され、反復的な治療が必要で就業継続に配慮が求められる患者であれば、幅広く算定できる制度になりました。CPAP治療を継続する従業員について、主治医が産業医等へ治療状況や就業上の留意点を共有するこの仕組みを活用すれば、「受診勧奨をしただけ」ではなく、医療機関・産業保健と連携して就労継続を支援した実績として、Q52(特定保健指導以外の保健指導)やQ69の効果検証の記録に厚みを持たせることができます。
治療の継続しやすさという観点では、オンライン診療を活用した通院負担の軽減も選択肢に入ります。多忙な従業員ほど通院を理由に治療を中断しやすいため、継続管理の手段を複数用意しておくことは、Q69が求める「効果検証と改善」の実効性を高めることにもつながります。対象者の選び方、個人結果を会社が受け取らない検査導線、会社へ渡す匿名集計の範囲は、法人プログラムの検査・匿名集計の仕組みで確認できます。
「取組んでいる」ことをどう記録として残すか
調査票の設問は、実施した事実だけでなく「把握し、検証し、改善した記録」を求めています。実務上、次の記録を残しておくと、複数の設問への回答根拠として機能します。
- 健康課題、数値目標、責任者、期限を含む健康経営計画(Q32対応)
- 睡眠施策の対象者、実施期間、実施方法、費用補助の有無(Q55対応)
- 研修の実施日、対象者数、参加率(Q38対応)
- 匿名化した睡眠休養感・睡眠時間の集計値と基準時点(Q62対応)
- 効果検証の方法、結果、翌年度に見直す事項(Q69対応)
特に重要なのは、企業向けに提供される匿名集計レポートを「受け取って終わり」にせず、健康経営推進会議や経営会議で報告し、次年度の施策見直しに使った記録を残すことです。大規模法人部門のQ69・中小規模部門のQ32はいずれも、評価と改善の両方がなければ不認定と明記されている必須要件であり、単年度の実施だけでは説明力が弱くなります。
効果検証の指標は、休養感アンケートのような主観的な指標だけでなく、より客観性の高い指標と組み合わせると説明力が増します。例えば、治療を開始した従業員における「1日平均4時間以上のCPAP使用」という継続利用の状況は、日中の眠気改善と関連する目安として学会でも扱われている指標であり、治療導入後のフォローアップ状況を示す材料になり得ます。また、学会のガイドラインでは、CPAP治療が日中の眠気だけでなく身体的・精神的な生活の質(QOL)全般の改善にも寄与するという報告が示されており、睡眠休養感アンケートの改善を「単なる主観の変化」ではなく、既存のエビデンスと整合する変化として説明する際の裏付けにできます。
実際に取り組んでいる企業の例
SCSKは睡眠モニタリングやアプリの活用と睡眠教育セミナーを、長時間労働削減施策と併せて健康経営の中核施策の一つに位置づけています。伊藤忠商事は朝型勤務制度と連動させた睡眠・休養セミナーを実施し、第一生命保険は睡眠改善アプリとSASリスクスクリーニング、要医療者への受診勧奨を組み合わせています。オムロンヘルスケアは自社の睡眠計測技術を用いた全社セミナーとスクリーニングを行っています。
森トラストやリコーITソリューションズのように、「睡眠により十分な休養が取れている」割合や睡眠充足率を毎年公表し、健康指標として時系列で追跡している例もあります。森トラストは2022年68.9%、2023年65.8%、2024年66.8%という3年分の数値を公表しており、単年の実施報告ではなく継続的な指標としての扱いが分かります。DeNAは2024年度のSAS検査人数を71人と公表しており、こうした利用実績を集計値として示すことも、健康課題の把握を裏付ける材料になります。これらはいずれも、単発の施策ではなく、継続的な指標化とセットで運用されている点が共通しています。
避けるべき表現
制度の文脈で睡眠施策を説明する際、次のような表現は景品表示法や医療広告ガイドラインに抵触するリスクがあるため避ける必要があります。「導入すれば健康経営優良法人に確実に認定される」「睡眠検査を実施するだけで加点される」「睡眠対策は必須義務項目である」といった断定表現です。正確には、「健康課題の把握、健康教育、受診勧奨、効果検証という既存の評価項目の中で、睡眠施策を根拠として整理できる」という説明にとどめるべきです。
次回申請に向けて
健康経営優良法人2027の申請受付は2026年8月17日に開始されました。大規模法人部門の回答期限は2026年10月9日(金)17時で、調査票には「締切の延長は行いません。期日以降のご回答は一切受け付けません」と明記されています。中小規模法人部門は10月16日が締切です。
睡眠施策を根拠として使うのであれば、申請直前に取組を始めるのではなく、健康課題の設定から効果検証までのサイクルを、今の時点から記録し始めることが実務上の近道になります。特に令和8年度は睡眠がQ55として独立したため、「実施しているのに、記載する欄が分からず書き漏らした」という取りこぼしが起きやすい年です。昨年度の回答をそのまま転記せず、睡眠に関する取組を一度棚卸ししておくことをおすすめします。
睡眠の健康課題把握から、記録が残る形で始めたい企業へ
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Q. 睡眠に関する設問が新設されたと聞きました。認定に必要になったということですか?
A. いいえ。令和8年度の健康経営度調査(大規模法人部門)でQ55「睡眠の質向上に向けた取り組み」が独立設問として新設されたのは事実ですが、この設問には必須設問を示す「★」も、認定要件かつ選択設問を示す「■」も付いていません。認定要件として列挙された評価項目(①〜⑰)にも睡眠の項目はなく、個別の配点も公表されていません。
Q. 睡眠施策を導入すれば健康経営優良法人に認定されますか?
A. いいえ。睡眠施策の実施だけで認定や加点が確約される仕組みはありません。健康課題の把握、健康教育、受診勧奨、効果検証といった既存の評価項目の中で、根拠の一つとして整理できるものです。
Q. 昨年度と同じ内容を書けば済みますか?
A. 大規模法人部門は設問番号が変わっているため、そのままの転記は危険です。特に睡眠は、令和7年度まで「生産性低下防止のための施策」(旧Q56)の中にありましたが、令和8年度の同設問(Q56)からは睡眠が外れ、Q55へ移りました。書き写すと睡眠施策が記載されないまま提出される可能性があります。
Q. 中小規模法人部門でも睡眠施策は評価対象になりますか?
A. 認定審査に使われるのは必須のQ10(推進計画)とQ32(評価・改善)で、Q10の課題テーマ一覧に「睡眠不足の改善」が含まれています。睡眠の取組を細かく選ぶQ48にはSAS検査も明記されていますが、Q41以降は任意回答で「認定審査には使用しません」と明記されています。ブライト500・ネクストブライト1000向けのPDCA設問(Q37)でも「睡眠不足の改善」が課題テーマとして扱えます。
Q. 睡眠セミナーは参加者数さえ確保すれば評価されますか?
A. 大規模法人部門のQ38の内訳(SQ1)は「当設問は評価に使用しません」と明記しています。重要なのは、対象者数・参加率を把握し、記録として残しているかどうかです。
Q. 企業向けの匿名集計レポートは、受け取るだけで認定要件を満たせますか?
A. 満たせません。Q69(大規模)・Q32(中小規模)はいずれも必須要件で、評価と改善の両方を求めています。いずれも、評価または改善を行っていない場合は「健康経営優良法人不認定」と申請書上に明記されています。レポートを次年度の施策見直しに使った記録まで残すことが必要です。
Q. 2027年の申請スケジュールはいつまでですか?
A. 申請受付は2026年8月17日に開始されました。回答期限は大規模法人部門が2026年10月9日(金)17時、中小規模法人部門が2026年10月16日(金)17時で、いずれも「締切の延長は行いません」と明記されています。
Q. 受診勧奨した従業員が治療につながったかどうかも記録する必要がありますか?
A. 記録が求められているのは「評価と改善」であり、個人の受診・治療状況そのものを人事が収集することは推奨されません。2026年度から疾患要件が撤廃された「療養・就労両立支援指導料」のように、医療機関・産業保健が連携する制度を活用しつつ、企業側は匿名化された利用実績・参加率の集計にとどめる設計が安全です。
参考・出典
- 経済産業省『健康経営優良法人認定制度』制度概要
- 経済産業省・日本経済新聞社『令和8年度 健康経営度調査』(大規模法人部門・2026年8月17日公開)
- 経済産業省・日本経済新聞社『健康経営優良法人2027(中小規模法人部門)認定申請書』(2026年8月17日公開)
- ACTION!健康経営(日本健康会議)『健康経営優良法人2027(大規模法人部門)認定要件』(評価項目①〜⑰に睡眠の項目は含まれない)
- ACTION!健康経営(日本健康会議)『健康経営優良法人2027 中小規模法人部門 認定要件』
- 経済産業省『第6回健康経営推進検討会』資料(2026年7月14日)
- 経済産業省『健康経営優良法人2026認定法人の発表』(2026年3月9日)
- SCSK株式会社、伊藤忠商事株式会社、第一生命ホールディングス、ロート製薬株式会社、オムロンヘルスケア株式会社、DeNA、森トラスト、リコーITソリューションズ 各社公式サイト・サステナビリティレポート(確認日:2026年7月24日)
- 一般社団法人日本呼吸器学会『睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン2020』(CQ10:OSAと日中の眠気・自覚症状の関連/CQ21:CPAPによるQOL改善効果)
- 日本循環器学会 等『2023年改訂版 循環器領域における睡眠呼吸障害の診断・治療に関するガイドライン(JCS 2023)』(簡易モニター(REI)の特性と過小評価のリスク/解剖学的リスク要因)
- 厚生労働省『令和8年度診療報酬点数表』在宅持続陽圧呼吸療法(CPAP)導入基準の見直し(2026年6月施行)、療養・就労両立支援指導料(B001-9)の対象疾患要件撤廃
- 厚生労働省『オンライン診療の適切な実施に関する指針(令和8年4月改訂版)』

