Apple Watchで「睡眠時無呼吸の可能性」と通知されたら?病院受診・検査の目安を医師が解説
Apple Watchから「睡眠時無呼吸の可能性」と通知されて不安な方へ。通知の意味と精度、受診の目安、医療機関の睡眠検査との違いを、Apple・PMDAの公開資料をもとに整理します。
Apple Watchから「睡眠時無呼吸の可能性」という通知が届き、病院に行くべきか迷っている方に向けて、まず結論を3つお伝えします。
- 通知だけで睡眠時無呼吸と診断されるわけではありません。中等度〜重度の睡眠時無呼吸の「兆候」を知らせる機能です。
- 通知が届いたら、医師に相談することが勧められています。検査が必要かどうかは、症状や持病と合わせて医師が判断します。
- 通知がなくても、睡眠時無呼吸がないとは言い切れません。大きないびきや日中の強い眠気などがあれば、通知の有無にかかわらず相談を考えてください。
睡眠時無呼吸症候群そのものの症状・原因・治療を知りたい方は「睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは」をご覧ください。
Apple Watchで睡眠時無呼吸の通知が出たら、まずどうする?
通知は「中等度以上の兆候」のお知らせで、診断ではない
この通知は、Apple Watchが約30日間の睡眠中のデータから、中等度〜重度の睡眠時無呼吸を示唆する「呼吸の乱れ」が続いていると判断したときに届きます。日本では、Apple Watch上で動く「Appleの睡眠時無呼吸の兆候の通知プログラム」が管理医療機器として承認されていますが、Apple Watch本体が睡眠検査の機器になったわけではありません。
承認時の添付文書でも、通知は医療機関でのスクリーニング検査・簡易検査・睡眠ポリグラフ検査()の代わりではなく、医師による診断に替わるものでもない「1つの参考指標」とされています。通知を受け取ったら自己判断せず、医師に相談してください、というのがAppleと添付文書の共通した案内です。
状況ごとの考え方の目安は次のとおりです。
| 状況 | 考え方と次の行動 |
|---|---|
| 通知あり+いびき・無呼吸の指摘・強い眠気などがある | 相談の優先度が高い状態です。早めに医療機関へ相談してください |
| 通知あり+自覚症状はほとんどない | 自覚がなくても睡眠時無呼吸のことはあります。通知があったことを医師に伝え、検査の要否を相談してください |
| 通知なし+いびき・無呼吸の指摘・強い眠気などがある | 通知がないことは否定の根拠になりません。症状をもとに相談を考えてください |
| 通知なし+気になる症状もない | 急いで受診する状況ではありませんが、通知がないことで睡眠時無呼吸が否定されたわけではありません。いびきや眠気が気になってきたら相談してください |
| すでに睡眠時無呼吸と診断されている | この通知機能の対象外です。現在の主治医の方針を優先してください |
自覚症状がない場合も、通知のことは医師に伝える
睡眠時無呼吸は、本人が気づきにくい病気です。眠気に慣れてしまっている方や、一人で寝ていていびきを指摘されない方もいます。「眠くないから大丈夫」と通知を見送らず、まずは相談の材料にしてください。一方で、通知が出た方全員に必ず検査が必要というわけではなく、問診の内容によって判断が変わります。
相談するときは「PDF」を用意する
通知を受け取った後は、iPhoneの「ヘルスケア」アプリで「ブラウズ」→「呼吸」→「睡眠時無呼吸の通知」を開き、画面下の「PDFとして書き出す」から医療機関向けのレポートを作成できます。口頭で「通知が来た」と伝えるより、通知の時期や呼吸の乱れの推移が分かるため、診察の参考になります。ただし、PDFは睡眠検査の結果そのものではなく、診断の材料の一つとして扱われます。
当院では、Apple Watchの通知をきっかけにしたご相談もオンライン初診で承っています。PDFや通知画面をご用意のうえ、Apple Watchの通知について医師に相談するからご予約ください。
Apple Watchは睡眠時無呼吸をどのように検出している?
Apple Watchは、手首に内蔵された加速度センサーで睡眠中のわずかな体の動きを記録し、呼吸が途切れるときに生じる動きのパターンを「呼吸の乱れ(Breathing Disturbances)」として推定しています。この通知機能が使うのは手首の動きの情報で、医療機関の検査のように脳波や鼻の気流、血中酸素を測って判定しているわけではありません。
- 毎晩の呼吸の乱れは「高い」「高くない」に分類される
- 30日ごとに解析され、30日のうち少なくとも10晩の記録が必要
- 記録できた夜の半数以上で「高い」が続いた場合に通知される(Appleの技術資料)
- 対象は、睡眠時無呼吸と診断されたことがない18歳以上の方
つまり、一晩だけ呼吸の乱れが高かったことで通知が届く仕組みではありません。なお、お酒を飲んだ日や寝る姿勢、鼻・のどの病気、一部の薬でも、呼吸の乱れは増えることがあります。
対応機種は、2026年11月時点のAppleサポートでは「Apple Watch Series 9以降、Ultra 2以降、SE 3(最新のwatchOS)」とされています。機種や設定方法は更新されることがあるため、Apple公式サポートでご確認ください。
「呼吸の乱れ」とAHIは同じではない
医療機関で睡眠時無呼吸の重症度を表すは、睡眠1時間あたりの無呼吸・低呼吸の回数です。Appleは技術資料の中で、呼吸の乱れの値はAHIと同等ではないと明記しています。ヘルスケアアプリの数値をAHIに読み替えて「軽症」「重症」と判断することはできません。
Apple Watchの睡眠時無呼吸通知の精度は?
Appleは承認申請のため、米国の7医療機関で臨床試験を行っています。18歳以上の1,499人が参加し(1,448人が完了)、最大30晩Apple Watchを装着したうえで、自宅で行う簡易睡眠検査(2晩以上)の結果と通知を比べました。結果は次のとおりです。
- 中等度〜重度の人のうち、通知が出た割合(加重感度):66.3%
- うち中等度の人:43.4%(205人中89人)
- うち重度の人:89.1%(184人中164人)
- 正常〜軽症の人のうち、通知が出なかった割合(加重特異度):98.5%(正常の人では543人全員に通知なし)
感度・特異度は何を意味する?
「感度」は、病気のある人を通知で拾えた割合、「特異度」は、病気のない(または軽い)人に通知を出さなかった割合です。この機能は、不要な通知を減らすために特異度を優先して設計されています。そのため、「Apple Watchの精度は66.3%」と一言でまとめることはできません。通知が出たときと出ないときで、意味合いが大きく異なります。
通知が出た場合は、中等度以上の睡眠時無呼吸が隠れている可能性を示す重要な情報です。添付文書では、中等度以上の人が成人の1割程度という前提で、通知が出た人のうち実際に中等度以上だった割合を約83%と推定しています。言い換えると、通知が出ても必ず病気というわけではないため、検査で確かめることが大切です。
通知が出なくても睡眠時無呼吸は否定できない
一方、中等度の睡眠時無呼吸がある人では、通知が出たのは半数以下(43.4%)でした。軽症の人を見つけることは、もともとこの機能の目的に含まれていません。添付文書でも「通知がないことは、睡眠時無呼吸がないことを示すものではない」と警告されています。また、この機能は睡眠時無呼吸以外の睡眠の病気を見つけるものではありません。
臨床試験の限界
- 比較の基準は入院の精密検査(PSG)ではなく、自宅で行う簡易睡眠検査でした。簡易検査は重症度を低めに評価することがあると、添付文書にも記載されています
- 参加者は米国の成人で、平均年齢46歳、平均BMI約32と、日本の一般的な体格とは異なる集団です
- 睡眠中によく動く、手首にしっかり装着していないなど、日常の使い方によってはデータが十分に集まらないことがあります
Apple Watchと病院の睡眠検査は何が違う?
医療機関の睡眠検査には、自宅で行う簡易検査と、脳波まで測る精密検査(PSG)があります。Apple Watchの通知との違いを整理します。
| Apple Watchの通知 | 自宅での簡易睡眠検査 | PSG(精密検査) | |
|---|---|---|---|
| 目的 | 中等度以上の兆候を知らせ、受診を促す | 睡眠中の呼吸を客観的に評価する | 睡眠の状態を含めて詳しく評価する |
| 主に測るもの | 手首の動き | 鼻の気流、呼吸の動き、血中酸素など | 脳波、眼の動き、筋電図、呼吸、血中酸素など |
| 結果の表し方 | 呼吸の乱れ(AHIとは別) | など(記録時間で計算) | AHI(実際に眠った時間で計算) |
| 診断での位置づけ | 単独では診断できない | 医師が診断に用いる | 標準的な診断検査 |
| 主な限界 | 中等度でも通知が出ないことがある。睡眠時無呼吸以外の病気は分からない | 脳波がなく、重症度を低めに評価することがある。疑いが残ればPSGを検討 | 検査の負担が大きく、入院や専用の施設で行うことが多い(自宅で行う在宅PSGもある) |
簡易検査は脳波を測らないため、実際に眠っていた時間が分からず、重症度が低めに出ることがあります。簡易検査の結果と症状が食い違う場合や、心臓・肺・神経の持病がある場合などは、PSGが検討されます。2つの検査の違いは「簡易検査とPSG検査の違い」、結果の読み方は「簡易検査の結果が届いたら?」で詳しく解説しています。
当院では、医師が必要と判断した場合に、自宅で受けられる簡易検査・在宅PSGをご案内しています。通知や症状から自宅での睡眠検査が必要かオンラインで相談することもできます。
Apple Watchの通知が出たら何科を受診する?
睡眠時無呼吸は、睡眠外来のほか、内科・呼吸器内科・耳鼻咽喉科などで診療されています。診療科の名前よりも、睡眠時無呼吸を診療していて、簡易検査や必要に応じたPSGまで対応できる医療機関を選ぶことが大切です。症状別の受診先の考え方は「いびきがひどいときは何科を受診する?」をご覧ください。
受診時に医師へ伝えたい情報
- 通知が届いた時期と、ヘルスケアアプリのPDF
- いびきや呼吸が止まっていることを家族に指摘されたか
- 日中の眠気、夜中に息苦しくて目が覚める、起床時の頭痛など
- 高血圧・心臓病・脳卒中などの持病、服用中の薬、飲酒の習慣
- 最近の体重の変化、鼻づまりの有無
通知がなくても受診を考えた方がよい場合
前述のとおり、中等度の睡眠時無呼吸でも通知が出ないことは珍しくありません。次のような症状が続く場合は、Apple Watchの通知の有無にかかわらず、医療機関への相談を考えてください。
- 大きないびきを毎晩のようにかく
- 寝ている間に呼吸が止まっていると家族に言われた
- 日中に強い眠気があり、会議中や運転中に眠くなる
- 息苦しさや、むせるような感じで夜中に目が覚める
- 朝起きたときに頭痛がある、熟睡感がない
これらの症状があれば必ず睡眠時無呼吸というわけではなく、ほかの睡眠の病気や生活習慣が原因のこともあります。ご自身の症状を整理したい方は、睡眠時無呼吸セルフチェックもご利用ください。運転中に眠り込みそうになる、眠気でヒヤリとしたことがある場合は、早めに受診してください。
Apple Watchの通知をきっかけに睡眠検査を受ける場合、保険は使える?
Apple Watchの通知があるだけで、検査の保険適用が自動的に決まるわけではありません。医師が診察し、症状や持病、通知の内容などから睡眠検査が医学的に必要と判断した場合に、保険診療として検査を行えることがあります。
当院での費用の目安は専門外来の料金案内、検査方法ごとの費用の考え方は「睡眠時無呼吸の検査費用はいくら?」をご確認ください。
当院ではオンライン初診から自宅での睡眠検査を相談できます
当院の「いびき・日中の眠気 専門外来」では、Apple Watchの通知をきっかけにしたご相談を、次の流れで承っています。
- オンライン初診:通知の内容、症状、持病を医師が確認します
- 自宅での簡易睡眠検査:医師が必要と判断した場合に、検査機器をご自宅へお送りします
- 結果の説明:オンラインで医師が結果をご説明します
- 必要に応じた追加検査・治療の検討:結果によって在宅PSGを追加したり、治療方針を相談したりします
CPAP治療を始める場合は、導入時と約1か月後の計2回、新宿院での対面診療が必要です。重症が疑われる場合や持病の精査が必要な場合など、入院での精密検査が適している場合は、連携する医療機関をご紹介します。詳しくはいびき・睡眠時無呼吸のオンライン初診について詳しく見るからご確認ください。
よくある質問
Q. 通知が出たら、必ず睡眠検査が必要ですか?
A. 自動的に決まるものではありません。症状、持病、通知の内容などをもとに、医師が検査の必要性を判断します。ただし中等度以上の兆候を知らせる機能のため、まずは医師への相談をおすすめします。
Q. Apple Watchのデータを医師に見せられますか?
A. 通知を受け取った後は、ヘルスケアアプリから「PDFとして書き出す」でレポートを作成し、医療機関と共有できます。PDFは睡眠検査の結果そのものではありませんが、通知の時期や経過を伝える参考になります。
Q. 通知が出た場合、保険で検査を受けられますか?
A. 通知だけで保険適用が決まるわけではありません。医師が診察し、検査が医学的に必要と判断した場合に、保険診療で検査を行えることがあります。
Q. 一度通知が出た後、呼吸の乱れが「高くない」に戻りました。様子を見てもよいですか?
A. 呼吸の乱れは、飲酒や寝る姿勢などで日によって変わります。その後の値だけで判断せず、通知があったことを医師に伝えて相談してください。
Q. Apple WatchでAHIは分かりますか?
A. 分かりません。Apple Watchの「呼吸の乱れ」はAHIと同等ではなく、重症度の判定には医療機関の睡眠検査が必要です。
Q. すでに睡眠時無呼吸と診断され、CPAPを使っています。この機能は使えますか?
A. 睡眠時無呼吸の通知は、診断されたことがない方を対象とした機能です。治療中の経過は、CPAPの記録データなどをもとに主治医と確認してください。
Q. 対応しているApple Watchはどの機種ですか?
A. 2026年11月時点のAppleサポートでは、最新のwatchOSを搭載したSeries 9以降、Ultra 2以降、SE 3が対象とされています。最新の情報はAppleサポートでご確認ください。
参考・出典
- Apple サポート『Apple Watchの睡眠時無呼吸の通知』
- Apple. Estimating Breathing Disturbances and Sleep Apnea Risk from Apple Watch. September 2024.
- PMDA 添付文書『Appleの睡眠時無呼吸の兆候の通知プログラム』(2025年10月 第2版)
- PMDA『プログラム医療機器の承認等情報』
- Kapur VK, et al. Clinical Practice Guideline for Diagnostic Testing for Adult OSA. AASM. J Clin Sleep Med. 2017.
- 日本循環器学会『2023年改訂版 循環器領域における睡眠呼吸障害の診断・治療に関するガイドライン』

